音楽の買い物

今にも壊れそうだ、と思い続けて幾年月だった音盤再生機の音がとうとう出なくなった。いくら触っても叩いてもウンともスンともいわなくなった。もうちょっと手をほどこせばなおりそうでもあったけれども、もともとあんまり気に入ってもいなかったので、いい機会なので見限らせていただくとしようと、日暮れどき、新宿の量販店へ新しい機械を買いに行った。

あんまり得意でない量販店へ行くめったにない機会、ついでに、何ヵ月ぶりかでタワーレコードへ行ってみることに。すると、なんというグッドタイミング、現在タワーレコードは「ダブルポイントキャンペーン」の真っ最中なのだった。特に深い考えもなく足を踏み入れたのだったが、「ダブルポイント」という文字を見たとたん、急に興奮。いつものように眉間にシワを寄せつつ吟味に吟味を重ねて、ディスクを5枚選出してわーいわーいと、急に上機嫌で無事に新しい機械を購入して、本日の用事はおしまい。

万事抜かりなく配線が終了して、新しい再生装置での初聴きは、シゲティのバッハとなった。シゲティのバッハはすごいほど美しいのだった。

お買いものメモ


つい書き損ねてしまうディスクお買い物メモなのだったが、最近買ったのは、

先月のある日の「ダブルポイントデー」の銀座山野楽器でうまいこと欲しいディスクを輸入盤で見つけることができたのだった(廉価盤以外の国内盤はよほどのことがないと買わない)。

で、ここ一ヵ月、バッハ・コレギウム・ジャパンのコーヒー・カンタータに夢中だった。ラストの三重唱の至福。《猫がねずみとりをやめないように娘らはいつまでもコーヒー党、それがどうして責められよう》ですって! 

バッハ・コレギウム・ジャパンによる世俗カンタータの公演は何年か前の猛暑の日の東京オペラシティで聴いたことがあって、すばらしかったなあといまでもよい思い出。「室内オペラ」という感じの軽やかな歓びが無類だった。あの日のライヴレコードは出ているのかな。それにしても、コーヒーカンタータに聴き惚れていると、いつか演奏会でぜひ聴きたいものだと思う。生で聴いたらさぞかしと思う。


それから、その前に買ったのは、

という、これまた嬉しい2枚が、ある日の銀座山野楽器(もちろんダブルポイントの日)でふいに見つけて狂喜乱舞だった。内田光子さんとボストリッジの《美しき水車小屋の娘》は、去年3月のサントリーホールで聴いたのが記憶に新しいけれども、このレコードを買ったのはその演奏会のちょうど1年後という頃合いだったので、レコードを聴きながら1年前のその日のことを思い出してさらに格別だった。

ムターの新譜はデュティユーがムターに捧げた新作。ムターによる新作ディスクは毎回のおたのしみで、聴いていつもまっさきに感じるのは、現代音楽云々というよりも、ヴァイオリンという楽器の特質とか美しさそのもの。さらに、今回のディスクは既出のバルトークストラヴィンスキーカップリングされているので、なんとなく20世紀からの流れ、みたいのを考えないとなあという気にもさせられて、こういうのがとてもいい。


さらに、その前に買ったのは、

で、アルゲリッチマイスキーのライヴレコードは曲目が思いっきり好みで嬉しかった。1曲目のストラヴィンスキーの《イタリア組曲》はムターの演奏会で聴いた思い出の1曲で、とても愛着があったので、こちらはチェロだけど新しい演奏が手に入って嬉しい。ムターのイタリア組曲を聴いたのは、新之助の『助六』を見た同月のカーネギーホールのリサイタル、ムターを聴きにわざわざニューヨークまで出かけたのだったが、行っておいてよかったなあとしみじみ思う。以来、ムターの演奏会に出かける機会がないままであった。次にムターを聴くのはいつになるのかな。

演奏会というと、バッハ・コレギウム・ジャパンカンタータ全集25巻に収められている演奏会以来、出かける機会がないままなのだった。すっかり出不精になってしまっている。あの日聴いた BWV.78 は素晴らしかったなあと、先の内田光子さんみたいに思い出の演奏会と同じ曲目のレコードが手元にあるのはひときわ嬉しい。ムターのイタリア組曲のディスクもいつか出るといいなあと思う。


もっとさらにその前に買ったのは、

モーツァルト:弦楽五重奏曲全集

冬から春にかけて隅から隅まで聴きこんだ3枚組ディスク。有元利夫のジャケットが素敵で毎年恒例の小川美術館の有元利夫展をたのしみにしながら、夜な夜な聴いていた。けれども展覧会は今年も行き損ねた。