武藤康史さんの「文学鶴亀」を全部読みたい

手持ちの手帳によるとサマータイムは昨日終了なり。自分内サマータイムも終了としよう。だけど、今日は通常より1時間早く起きる。だんだん起きられなくなってくるので今のうち。週末にさぼった家事をいろいろしても、早起きのおかげで時間が余った。喫茶店でコーヒーを飲む。


借り物の雑誌「ノーサイド」を眺める。目当ては武藤康史の連載《文学鶴亀》。第7回(1995年3月号/特集:アメリカの贈り物)が網野菊さんで「おっ」だった。今回借していただいたのはあと2冊、第2回(1994年10月号/特集:戦後が似合う映画女優)は野上弥生子さん、第21回(1996年5月号/特集:美食家列伝)は久米正雄となっている。この次号の1996年6月の《歌舞伎の新時代》は当時特に歌舞伎ファンではなかったのになぜかリアルタイムで買っていて、買ったらいきなり終刊だった。全22回の武藤康史の《文学鶴亀》はどういうラインナップなのだろう。ぜひとも図書館でコピーして私家版綴じ本を作りたいものだ。私家版綴じ本(初出の「彷書月刊」でコピー)で愛読していた坪内祐三の「極私的東京名所案内」が刊行されたことで、ながらくひそかな趣味だった私家版作成熱がちょっと再燃しているところ。ほかにひそかに作成中のラインナップは第一次「歌舞伎」(演博の図書室で全目次を発見して興奮!)の三木竹二コレクションとか、杉贋阿弥劇評集といったところ。「演芸画報」の藤沢清造http://www.on.rim.or.jp/~kaf/carnets/books/fujisawa.html)も作ったけどこれはしょぼかった…。今後は本関係をもっと充実させたいものである。とかなんとか、月曜日の朝、マニアックな決意をして気を紛らわす。

武藤康史さんの文章を読んで、ある時期の東京山の手花柳界文学史の陰と陽として、網野菊『ゆれる葦』とセットで野口冨士男の『風の系譜』が挙がっていて、なるほどなと思った。野口冨士男の『風の系譜』、いつか読んでみたいものである。「網野菊伝を含む」という阿川弘之志賀直哉伝』をチェック、とメモ。網野菊さんが訳しているという理由だけで『シャーロット・ブロンテ伝』の著者、ギャスケルのことが気になって、岩波文庫を買って読んだらとてもよかったのは今年3月のことだった。武藤康史によると「不幸な話を書いてもなかなかハードボイルト」で「『私小説』というような区分けに入れる気がしない」という創作態度は「ブロンテ姉妹から学んだ面が多々あることだろう」とのこと。みすず書房の『ブロンテ全集』が欲しい。と、またもや本を欲しがっている…。

野上弥生子さんの短篇、武藤さんが推しているのは『或る男の旅』(「中央公論」大正10年9月)、『助教授Bの幸福』(「中央公論」大正7年9月)とメモ。「なかなかいい」という『若い息子』(「中央公論」昭和7年10月)は森茉莉の文章を読んで感激して、古い角川文庫を取り寄せたものだった。森茉莉野上弥生子に関する文章、大好きだった。大岡昇平による野上弥生子の文章も大好きだったし、もしかしたら野上弥生子を書く文章はよいものばかりなのかも。

ノーサイド」の《戦後が似合う映画女優》の新珠三千代の項で丹野さんが代表作として挙げている、佐分利信監督の『夜の鴎』がとっても観たい! 佐分利信レトロスペクティヴがどこかの映画館で開催されたら全部行くッ、と夢想しているうちに時間になる。


時間の推移とともによい天気になってきた。日没後、すっかり暗くなって外に出るころは、涼しい空気が気持ちよく歩くのにぴったり。丸ビルのアメリカンファーマシーで買い物をする。月末1割引と月曜日ポイントカード2倍デーとが重なり店内大混雑。先月買わなかった分、必要な買い物が少々あり他もないかしらと燃える。リンツチョコレートが安売りしていたけどぐっとこらえる。とかなんとかアメリカンファーマシーに時間がとられ、こうしてはいられないと神保町へ早歩き。と、たどりついてはみたけれど、あまり本を見る意欲がわかず、岩波ブックセンターで「図書」を入手して、早々に帰ることにする。通りがかりに日本特価書籍に足を踏み入れたら、松下裕訳のチェーホフ『子どもたち・曠野』(麦秋社)が400円で売っているのを発見。この本、銀座の松坂屋の地下2階のインテリアショップに併設の本コーナーのテーブルに積んであるのを見て素敵だなあと思わず買ってしまいそうになっていたのだった。チェーホフは中公の全集が手元にあるけど、ちくま版の松下裕訳はどうなのだろうと思ったところで、閉店を告げる店員さんの凄みのある声が耳に入ったので、イソイソと外に出る。と、外に出たところで、東京堂群像社刊のリジヤ・アヴィーロワ/尾家順子訳『私のなかのチェーホフ』を見ようと思っていたのに忘れていたことに気づく。東京堂ももう閉店だ。三省堂に行こうかなとちょっと思ったけど、やめておく。


ミルクティを飲みながら「図書」を繰ったあとでちょっと横になって、バッハのマタイを聴いていたら、いつのまにか寝てしまった。「はっ」とえいっと起き上がってきちんとしてから就寝。まだ11時なのに。