禁酒宣言

朝、コーヒーを片手に三國一朗の『肩書きのない名刺』の精読を進める。これまたずいぶんおもしろい。尋常じゃないくらいすばらしい。朝のわが喫茶店リストのひとつにとあるビル内のお店がある。そのビル、三國さんの「イングリッシュ・アワー」の仕事先の跡地に建っているとのこと。ワオ! とたいそう嬉しかった。『肩書きのない名刺』の精読最終日の朝はその喫茶店に行こうと思う。今日は、今年の節分のころに出かけた本郷のおでんやさんが登場していて嬉しかった。三國さんと三國さんに目撃される老婆はどのあたりに座っていたのだろう。

昼休みの本屋さんで時間いっぱいまで立ち読み。村上春樹の音楽エッセイをふらっと繰ると、シューベルトの D.850 ソナタの章があって、嬉しい。この曲、大好き。村上春樹は好まぬという内田光子さんの演奏でわたしはこの曲に開眼したのだった。間抜けともいえる最終楽章が内田光子さんの手にかかると、曲全体がひとつのまとまりとしてくっきりと輪郭がみえてくる、あの快感! 村上春樹が引用している吉田秀和さんの文章に感激してウルウルする。と、頭の中で D.850 を鳴らせて、今夜帰宅後ひさしぶりに聴くとしようと急にウキウキ。

新刊コーナーにて、噂の鹿島茂の脇役本とはこれであったかと、ふらりと立ち読みする。伊藤雄之助の章を見て、勘三郎が主演の戸板康二の『車引殺人事件』の2時間ドラマ、殺されてしまう時平役はなんと伊藤雄之助! と、先日さる脇役通の方よりお教えいただいて大笑いだったことを思い出して、急にヒクヒク。今夜帰宅後ひさしぶりに『車引殺人事件』を読み返して、伊藤雄之助に思いを馳せようと張り切る。

と、昼休みに計画したことは結局果たせず、それどころではなく、いつのまにか1日は終わっていた。