週刊読書人の読書日録

お弁当はなんとかこしらえたものの朝食はサボって早々に外出、したおかげで時間がたっぷりあったので、喫茶店でのんびりする。昨日図書館で借りたばかりの、植田康夫編『読書日録大全』を繰る。日曜日の夜に西荻の古本屋さんで立ち読みして、戸板康二の単行本未収録の「読書日録」があったのでわーいわーいと、「図書館、図書館」といつものお念仏を唱えてさっそく借りたのだった。「週刊読書人」にて昭和52年より昭和61年まで掲載のさまざまな書き手による『読書日録』を掲載順に収録している。こういうのは文句なしにおもしろいのでウキウキとズンズンと繰ってゆく。

先頭の書き手、荒正人の冒頭で《わたしは、原則として、テレビを見ない。ひなたぼっこをして、ラジオの音楽を聞きながら、ほんをよむのは、愉しみの一つである。いま、FMのパガニーニが終わったところで、……》とあるのを見て、「わたしも!」と荒正人に急に親近感。数ヶ月前に古書展で100円で買った荒正人の『夏目漱石』という本をまだ読んでなかったことを急に思い出すのだった。三國一朗のお気に入りはどうやら神保町の岩波ブックセンターのようだ。ここに入ると、こんな本が出ていたのかと遅ればせながらに気づいて思わず買ってしまうことが多いと書いている。「わたしも!」と三國さんにさらなる親近感。角野栄子さんがディケンズの自作朗読のためのアメリカ旅行のことにちょろっと言及している。ディケンズの自作朗読はたいへんな人気だったらしい。角野さんは《耳できいて、充分楽しい文学というものは、やっぱり何か特別の魅力を持っているに違いない。》と新潮文庫版『デイヴィッド・コパフィールド』を再読し、作品のもつリズムというのを指摘している。角野さんはいままでほとんどなじみのない方だったけど、とても嬉しい文章だった。こういうのに出会えるのがこういう本の愉しみだなあと思った。

昼休みの本屋さんで岩波文庫ディケンズアメリカ紀行』上下を手にとる。『ピクウィック・クラブ』読了のあかつきに記念に買おうと思っているので、まだがまんなのだけど、こういう本がこのタイミングで刊行されているというめぐりあわせが極私的にたいへん嬉しく、またありがたいとジーンとなる。

日没後は銀座でお買い物少々。マロニエ通りの奥村書店にまた行ってしまう。戸板康二の『ちょっといい話』の「続々」までの3冊を買う。前々から手元に置いておきたかった『ちょっといい話』の初版本なのだった。少しずつここで未所持の戸板さんを揃えていこうと思っているのだけど、モタモタしているうちに少しずつではあるけど確実に在庫は少なくなっている。銀座をふらついているうちに家に帰るのがなんとなく億劫になってしまったので、喫茶店で本を読むことにする。『ピクウィック・クラブ』を読む。

ようやく帰宅すると、「銀座ブックバザール」の目録が届いていた。戸板康二のハガキ3枚が出ている。お財布の紐が緩みがちなこの時期、うっかり買ってしまいそう! どうしたものだろう。悩んでいるうちに寝る時間になってしまった。寝床で、昨夜文庫本を発掘していたら出てきた、いつかのささま書店の105円コーナーで購った神吉拓郎の『私生活』を読む。ズンズンと次から次へと読む。