渋谷でキェシロフスキを見たあと、ディケンズを買う。

朝の喫茶店カプチーノ高見順『昭和文学盛衰史』(文春文庫、解説は野口冨士男)をピンポイント式に読み返し、夢中。あっという間に時間になる。

夕刻、早々に外に出る。空気がツンと冷たい。このところ暖かかったので、むしろ嬉しく、早くも次の冬が待ち遠しいのだった。地下鉄に乗って渋谷へ。キェシロフスキ特集開催中の「シネマアンジェリカ」という名の映画館へ向かって、マークシティの脇の坂道をズンズンとあがる。ここはかつては「シブヤ・シネマ・ソサエティ」という名の映画館だった。戦前の小津映画に夢中になるきっかけになった映画館だった。何年ぶりかでこの坂道を通って、急に懐かしくなる。

日曜日に10年ぶりくらいに『ふたりのベロニカ』を見て、スクリーンに埋没してたいへん堪能だった。自分内イレーヌ・ジャコブ特集とでもいう感じに、続けて、『トリコロール・赤の愛』を見ることができて、ごきげん。トリコロールは青と白はリアルタイムに映画館で見ていたけど、赤はなぜか見逃していたので、こうしてひょんと見る機会がやってくるのもオツなことであった。いざ見てみると、このへんはちょっと甘いかなあとかいろいろと思ったりはするけれども、そんなことはどうでもよくて、映像の美しさと撮影の素晴らしさに陶然、こういう映画をスクリーンで見る快楽に酔いしれる、ただそれだけという感じ。

映画館を出ると、ますます底冷えがしている。道玄坂に出て、人ごみをぬって、ブックファーストへ。あれこれと立ち読みにいそしんで、学生のときの六本木の青山ブックセンターみたいな感覚を満喫。と、なにかとノスタルジックな気分になりつつ、イソイソと次はタワーレコードへ。ディケンズのペーパーバックを3冊調達する。

帰宅後の夜ふけ、むかし嶋田洋書で衝動買いしたカンヌ映画祭の写真集をひさしぶりに眺める。イレーヌ・ジャコブはいま、どうしているのだろう。