文化生活一週間 #32-33

夏休みおぼえ帳

母に誘われて、夏休みならではのよろこび、平日のモーニングショウ(水曜日女性1000円デー)に出かけた。

映画で興にのって、矢川澄子訳の『ハイジ』を読みたくなり、図書館で福音館書店の「古典童話シリーズ」を借りて、読んだ。福音館の「古典童話シリーズ」を手にするのは何年ぶりだろう! わが少女時代からかわらぬたたずまいに惚れ惚れ、ちょっとした気分転換の本読みだった。

夏休みにお正月、まとまったお休みは嬉しいけれども、平日のいつもの本読みペースが狂ってしまい、結局あまり本は読めずに終わる(いつも休みが終わってみると、その反動でかえって本がたくさん読める)。そんななか、『ハイジ』のほかに、今年の夏休みに読んだのが、アリス・マンロー/小竹由美子訳『イラクサ』(新潮クレスト・ブックス、2006年)。


イラクサ (新潮クレスト・ブックス)


九篇の短篇集。全9日間の夏休み、ちょうど1日に一篇ずつ読んだ格好。そんなゆっくりペースで読むのがいかにもふさわしくて、懶惰なわが夏休みの幸福な本読みだった。

夏休み最初の日曜日、神奈川県立近代文学館の閲覧室へ出かけた。この炎天下では、「かなぶん」行きのいつものおたのしみ、ウチキパンでパンを買って坂を上って公園でちょいとピクニック気分、は断念せねばならぬ、秋日和が今から待ち遠しいなと、元町の通りがかりのお店で軽く昼食を食べる。思いのほかとても落ち着くお店でよろこぶ。炎天下で疲れ果てていたのが一気に閑雅な時間となり、食後のコーヒーでしばしくつろぐ。神奈川近代文学館の閲覧室での午後はいつも大充実の時間、暑いなかをここまで来た甲斐があったわいと機嫌よく再び外に出る頃には暑さはだいぶやわらいでいた。日没後、銀座に出る。前日中止になった東京湾の花火の音がきこえた。ズドンズドンと音だけ何度も何度もきこえていた。

次週の日曜日、すなわち夏休み最終日、浅草から東武電車にのって、越谷へゆく。浅草から東武電車に乗ったのは初めて。業平橋をわたって、このあたりは玉ノ井、鳩の街……と車窓を眺めているだけでたのしい。そこはかとなくただよう場末感が味わい深い。小菅の拘置所の建築が目にたのしい。とかなんとかしているうちに、いつのまにかスヤスヤと寝ていて、あっという間に越谷に到着、今日もたいそう暑い。東武電車にのってここまでやってきたのは、越谷市立図書館(http://lib.city.koshigaya.saitama.jp/)の野口冨士男文庫が目的だった。

長年気になりつつも行き損ねていた野口冨士男文庫(http://lib.city.koshigaya.saitama.jp/usr/contents/noguti_menu.html)であったけれども、前週に神奈川近代文学館越谷市立図書館の野口冨士男文庫の刊行物(『野口冨士男文庫所蔵資料目録(図書・雑誌)』と1999年より年に一度毎年発行の「野口冨士男文庫」小冊子を全8冊)を閲覧し、その充実した誌面と地道な運営ぶりにいたく感激して、いてもたってもいられず思い切って図書館に電話で問い合わせてみると、目録も小冊子も入手可能とのことだったので、さっそく嬉々と出かけた次第。と、二階の野口冨士男関連の小展示をひととおり見物したあと、ご指定の「参考調査室」へ。お取り置きしていただいていた『野口冨士男文庫所蔵資料目録(図書・雑誌)』(5000円)を購入、小冊子はなんと無料であった(1、2、4号は品切れでコピーをとった)。職員の女性の親切な応対に心が洗われ、さらなる野口冨士男読みに心を躍らせ、ホクホクと外に出た。越谷駅までの十数分の途中、元荒川という名の川を渡る。先ほど見物したばかりの展示物にも元荒川にたたずむ野口冨士男の写真があったことを思い出して、臨場感によろこぶ。

帰りは南千住で下車して、コツ通りを出て、ひさしぶりにカフェバッハ(http://www.bach-kaffee.co.jp/)でコーヒーを飲んだ。「カフェ・シュヴァルツァー」という名のコーヒー。トレイの上の濃厚なコーヒーに焼き菓子と炭酸水が添えてある。絶品なり。

後日、越谷市立図書館のサイトにアップされている野口冨士男日記抄録(http://lib.city.koshigaya.saitama.jp/usr/contents/noguti_h17nikkisyou.html)をプリントアウトして、自分用小冊子をこしらえた。いたく胸を打つ日記で、あらためて野口冨士男という文学者の存在そのものに胸を熱くする。野口冨士男全日記が刊行されたら、どんなにすばらしいことだろうと思う。

敗戦記念日、4ヶ月ぶりに戸板康二ダイジェスト(http://www.ne.jp/asahi/toita/yasuji/)を更新(→ http://www.ne.jp/asahi/toita/yasuji/c/news/25.html)。

今後は1ヶ月に2回更新のペースを続けていけるようにしたいと思う。で、現時点では、ブログ(のはずの)日用帳よりも更新がリアルタイムだったりする。