神保町で長谷川郁夫『美酒と革嚢 第一書房・長谷川巳之吉』を買う。

河出書房の今月の新刊、長谷川郁夫の長谷川巳之吉本は出ているかしらッの一念で、昼、早歩きして本屋へゆく。新刊コーナーに面出しで、長谷川郁夫『美酒と革嚢  第一書房長谷川巳之吉』が売っていて、ジーンとなる。「図書新聞」で長谷川郁夫の長谷川巳之吉が連載されていると知ってからというもの、本になるのがひたすら待ち遠しかった。ガバッと中味をチェックすると、20年以上前の「早稲田文学」での連載(戸板康二も読んでいた連載)と平成になってからの「図書新聞」での連載をすべて完全収録している。人名索引も完備されている。装幀も(帯の文字数が多すぎる、ということ以外は)言うことなし。まったくもって間然するところがない仕上がり。長らく本になるのを待ち望んでいた身としては、まさしく覚悟をもって向き合うというか、なんというか、とにかく嬉しいなア! と、歓喜にむせぶ。さっそく購入、と言いたいところだったけど、この本は神保町で買いたい気がする。演劇書コーナーに権藤芳一『増補版 近代歌舞伎劇評家論』が依然見当たらないのを確認し、神保町に行けば見つかるかもとも思い、日没後に神保町に突進するとしようと、目には炎がメラメラ。

というわけなので、夕刻、神保町に向かって、メラメラと歩を進めたのであったが、権藤芳一はどこにも売っておらず、二冊一緒に買う予定であったのが大いに気勢をそがれ、気勢をそがれているうちに気持ちはほかの方へと向かいあれこれ見て回っているうちに、あれこれ思うところがあって頭のなかがグルグルまわっているうちにいつのまにか長谷川郁夫の長谷川巳之吉本のことを忘れていて、岩波ブックセンターを出て1分過ぎたところで、ようやく思い出す。そのままの方向に歩を進め、吸い込まれるように日本特価書籍に足を踏み入れると、長谷川郁夫『美酒と革嚢  第一書房長谷川巳之吉』定価6090円が5480円で売っていて、ようやくお会計。定価との差額で明日の朝はいつもより高いコーヒーを飲もうと、急に上機嫌になる。


美酒と革嚢 第一書房・長谷川巳之吉


帰宅後、伊勢丹のチェックの紙袋をペーパーナイフでカットしてこしらえたカヴァーを長谷川郁夫の長谷川巳之吉にかけて、ご満悦。さっそく読み始めて、深夜となる。