『青柳瑞穂の生涯』と iPod を買い、『警視庁物語』を見る。

朝の喫茶店で、読みさしだった高橋哲雄『スコットランド 歴史を歩く』(岩波新書、2004年)を繰る。スコッチウィスキーとタータンチェックデイヴィッド・ヒュームが好き、というただそれだけで長年スコットランドに心惹かれていたものだったけど(次の旅行先にとっておいたまま数年)、そんな浅薄さが心地よく払拭されていく、ページ数は薄くとも中身は非常に濃い本だった。全体を読み通してみると、いかにして18世紀にスコットランド啓蒙が花開いたか、という箇所が読んでいて実に爽快で、スコットランド啓蒙への愛がフツフツと再燃してくるのが嬉しかった。イギリス文学読みにおいても、読んでおいて大いにためになる本で、たまにでも気が向いてこういう本が読めたらいいなと思うので、今回は気が向いて、よかった。


と、ひととおり『スコットランド 歴史を歩く』を繰ったあと、昨日の国立劇場の『元禄忠臣蔵』のおさらいをすべく、まずはとりあえず切り抜いておいた朝日新聞夕刊の劇評をフムフムと読む。実に行き届いた劇評で、新聞でたまにでもこういう劇評が読めるとしたら、新聞もなかなか捨てたものではないなと嬉しい。残りの時間は、昨日買ったばかりの『元禄忠臣蔵』の上演資料集(1000円)をランランと熟読。国立劇場の上演資料集はいつもなんてすばらしいのだろう。



昼休み、本屋へゆく。平凡社ライブラリーの棚へ突進し、今月の新刊、青柳いづみこ『青柳瑞穂の生涯』をガバッと手に取り、そのままレジに直行。長谷川郁夫『美酒と革嚢』の読了時、いもづる式に読みたいなと思った本が何冊かあって、その一冊に『青柳瑞穂の生涯』があった。これは図書館ではなく購入してじっくり読みたいタイプの本だと思っていたら、なんとタイミングがよいことにほどなくして平凡社ライブラリーに姿をかえて発売になるとは、と大喜びしていたのだった。


青柳瑞穂の生涯 真贋のあわいに (平凡社ライブラリー)


いざ発売になってみると、堀江敏幸が解説を書いていて、よろこび二倍。堀江敏幸はこのごろはすっかり著書を読むのはさぼってしまっていて、むしろ、その解説の対象を追いかけたいと思ってしまう書き手にシフトしていたので、わが意を得たりで嬉しかった。コーヒーショップでひとやすみ、さっそく『青柳瑞穂の生涯』を読み始め、東京国立博物館の常設の尾形乾山を思い出しているうちに、時間になる。



帰り、有楽町のビックカメラiPod を買いに寄り、足どり軽やかに家路につく。



夜、東映のシリーズ映画「警視庁物語」の DVD があと4本あるので、今日はその2本目、関川秀雄『警視庁物語 追跡七十三時間』(昭和31年)というのを見ることにする。いつもの通りに(見るの2回目だけど)、冒頭でピストル強盗が発生(ズドンと容赦なく殺して金品を奪う)、残された手がかりおよびタイミングよく発見される手がかりをもとに犯人を追う警視庁の面々、といったストーリー。この深みとひねりのなさがいいなあとくつろいでいたら、うっかり5分ほど寝てしまい目を覚ましてみると、ちょっとだけストーリーがわからなくなっている。「警視庁物語」は併映の添え物映画なので時間は1時間という短い映画、展開が速いので油断はできないのだ。うむ、次回から気をつけようと気を引き締めつつ、画面を眺めていると、タイトルバックに名前のあった加藤嘉がまだ登場していないことにふと気づいた。そうか、今回の犯人は加藤嘉かと思う。今回はロケシーン、すなわち「銀幕の東京」に前回ほどはワクワクはしなかったけど、新宿の連れ込み宿の様子がおもしろかった。やっぱり東海林さだおの『漫画文学全集』を思い出してしまう。あ、このあたりは新宿の高島屋のふもとに今の残る古い旅館だなと思っていると、ようやく加藤嘉が登場、出たー! と、よろこぶ。



『警視庁物語』を見たあと、iPod にバッハのマタイ受難曲レオンハルト盤)3枚組をおとして、すっかり宵っ張り。