本棚整理をさぼって、映画館にゆき、手帳にメモする。

今日も洗濯物がよく乾きそうなお天気で嬉しいなアと早起きするも、今日も本棚整理の意欲がわかないので、今日も映画館に出かけることにする。総武線にのって阿佐ヶ谷へ。ちょいと時間が早かったので、映画のあとはささま書店まで歩きたいけど閉まっていたら新年早々がっかりなのであらかじめ確認しておくべく、荻窪まで乗り過ごして窓際に立って外を凝視していると、やはりささま書店は今日も休業の様子であった。がっくりと肩を落とす。そんなこんなで、阿佐ヶ谷に戻って、ラピュタ阿佐ヶ谷へゆく。並木鏡太郎『鏡山誉の女仇討』(昭和32年・新東宝)を見る。


こ、これは、まるでわたしのためにある特集だー、と狂喜したラピュタ阿佐ヶ谷の《蔵出し銀幕大歌舞伎》であったけれども、なんやかやで行き損ねてしまって無念だった。時代劇の『鏡山』っていったいどんなだろう、新東宝の映画で出演者にわたしの知っている人がまったくいない『鏡山』っていったいどんなだろう、並木鏡太郎といえばいつかのフィルムセンターで見た戦前の山田五十鈴主演の『樋口一葉』が本当にもう大変にすばらしかったけど戦後の『鏡山』っていったいどんなだろう……云々と、ほんの気まぐれに、本棚整理をさぼるためだけに見に来たと言っても過言ではなかった今回の並木鏡太郎『鏡山誉の女仇討』だったけれども、これがなかなかの佳品だった。特になんということがないといってはそれまでだけど、歌舞伎でおなじみの『鏡山』がきちんと時代劇の娯楽作になっていて、歌舞伎と時代劇的定石とがうまく調和していて、きちんと作っているなと作り手側の誠実さが感じられて、気持ちがよかった。映画館が人々の娯楽の中心だった頃の映画のこと、時代劇の黄金時代というようなもののあれこれをいろいろと追求したくなってきて(と言うのも大げさだが)、なんとなく嬉しくなってくる映画だった。変な映画でも78分という短さならまあ我慢できるかなと見に来たのだけど、見終わってみると、短い時間でテンポよくまとめているなと、その点でも好印象なのだった。


と、心持ちよく、長い長いアーケードの下を歩いて、青梅街道に出る。欲しい本が何冊かあったので書原でしばし物色。今日はうまいこと見つからず残念だったけど、書原で本を見るのはそれだけでたのしいので、まあ、よしとしよう。開いててよかった。丸の内線にのって新宿のジュンク堂に行こうかなという気持ちもかすめたけど、人ごみより閑散としたところをもうちょっと歩きたい気がする。四谷で下車して、しばし界隈を散歩したあと、通りがかりのコーヒーショップでひとやすみ。昨日今日とで入手した映画のチラシを何枚も眺めて、たのしい。行きたい映画目白押しで大変なことだと手帳に記入を開始するもなかなかスケジュールの調整がつかず、眉間にシワが寄る。まあ、いつも結局、予定の半分も見に行けないのだけど。当面の問題は金曜日の寄り道をフィルムセンターと渋谷のとちらかにするかだ、うーむ、どうしよう。などなど、いつまでも眉間のシワが消えないのだった。


もうすぐ日没という頃、麹町界隈を歩いて、一口坂を下って、新見附橋を渡った。