図書館デー

昨日の『盛綱陣屋』の興奮がまだまだ冷めず、朝っぱらから本棚を物色、岩波写真文庫の「歌舞伎」を開いてみると、首実検のところの各表情の写真がコマ送りで載っていてとても面白い。戸板康二の文章によると、十五代目羽左衛門だとここに5分費やしたとのこと、昨日の吉右衛門は何分ぐらいだったのだろう。全然長く感じなかったけれども。

日没後、なんやかやで出るのが遅くなってしまって大急ぎで京橋図書館へ。雨もやんだようだ。昨日の『盛綱陣屋』の興奮がまださめず、脚本を借りることにして、それから『鴈治郎芸談』の「河庄」のところをうーむと熟読した。とても面白かった。やはりわたしは和事の芸を味わうには未熟だったらしいということがよくわかった。あと、予約してあった内田誠の『緑地帯』(モダン日本社、昭和13年)という本を借りた。こんな本を所蔵している公立図書館って!

通りがかりのコーヒー店に寄って、内田誠の『緑地帯』をペラペラめくった。小村雪岱の装幀で時折挿入される白黒写真も素敵、内田誠の本はいつもぜいたくな仕上がりだ。三揃いのスーツを着た夢声が梅を見ている写真がたいへんかっこよく、鎌倉の海濱ホテルのサンルームのモダーンな白黒写真、よく見ると二人の人影があって、それは久保田万太郎渋沢秀雄とのこと。この写真がとても好きだ。「いとう句会」研究をそろそろ始めたいと思っている。内田誠という人物がまだまだ謎なのだが、ニューヨークやパリなど渡欧経験もあるようだ。パリでルノワールの絵を見る機会があってそのとき数日前にルノワールが亡くなったということを小耳に挟んだことをジャン・ルノワールの『どん底』を見ていて思い出した、という文章があった。それにしても、所有欲がモクモクと湧いてくる本だった。

一通り内田誠を眺め終わったあとは、『盛綱陣屋』の脚本を昨日の観劇メモと『舞台観察手引草』とを対照させて、ノートをとりつつ熟読。この作業になんの意味があるのかという感じではあるが、なんだかもう無類にたのしい道楽。注進受けのところで時間になったので、映画館へ。ひさしぶりの銀座シネパトス、改装されてちょいときれいになっているのでびっくり。まだまだ健在のようだ。

映画メモ