図書館デー

先月に歌舞伎座の『盛綱陣屋』にことのほか興奮してしまって、いろいろ尾を引いている。その一貫で戸板康二の『丸本歌舞伎』という本を読み返していた折、「丸本歌舞伎研究」という文章で、近松門左衛門の『用明天王職人鑑』という浄瑠璃のことがちょろっと出てきた。鐘入りの件で大蛇が火を吹くのだと言う。と、ここを目にしたとき「あっ」と思い出した。以前、国立劇場文楽の上演プログラムで、近松道成寺ものの存在を知って「ぜひとも読まねばッ」と思いつつ、それっきりになっていたのだった。うーむ、どんな文章だったかしらと思って、探してみたら、今年の2月の上演プログラムにおける内山美樹子さんの文章だった。鶴澤清治が復活したいと語っている作品で、『曾根崎心中』の2年後、近松竹本義太夫と終生一座する約束を固めた記念碑的作品とのこと。近松道成寺もの、ぜひとも読んでみたい!

というようなことを今朝、急に思い出して、頭のなかは一日中図書館へと行ってしまって、日没後、京橋図書館へ突進した。岩波の日本古典文学大系近松集に収録されているのを発見。これをさっそく借りることにして、わりと最近出た小学館の新編日本古典文学全集も予約。未読の浄瑠璃に接するのはずいぶんひさしぶり、とても楽しみだ。それにしても、図書館はいろいろな本を借りることができるのでたのしい、ありがたいことだ、と、素朴なよろこびにひたって帰宅。本棚の片づけをしながら、図書館で借りたばかりの、馬生師匠の『鰍沢』を聴いた。