小林信彦が久保田万太郎を、大学図書館と映画館

今出ている「週刊文春」で小林信彦久保田万太郎の小説『三の酉』のことを書いている、という内容のメイルをいただいてびっくり、昼休みさっそく立ち読みに出かけた。酉の市、切山椒、三島由紀夫による万太郎論、俳句のこと、『三の酉』のことと、内容そのものはわたしもすでに押さえていることばかりだったけれども、というか、それだからなおのこと嬉しかった。志ん生のかわりに志ん朝が万太郎の葬儀に参列した、というのは、小林信彦の『名人、志ん生そして志ん朝』で知ったことだった。この本を読む前に一度、小林信彦が万太郎全集を所有しているということをちょろっと書いているのを見てから、どこかで万太郎についてまとめて書いてくれないかしら、とずっと思っていた。それがめでたく実現したのだから、やれ嬉しや。そういえば、ずっと前に、山田風太郎の『人間臨終図巻』の獅子文六の項に小林信彦の文章が引用してあるのを見て、この文章の出典は何だろうと探したことがあったっけ。この出典を教えていただいたのも同じ方。なにはともあれ、ありがとうございます、なのでした。

ここしばらく戸板康二道をさぼっていたので、ひさしぶりに大学図書館へ出かけた。今日はひたすらコピー取り。戸板康二の雑誌記事をたくさん仕入れた。平日の夜に戸板康二調査のため訪れるのは、むかし卒業した学校の図書館なので、かつてのろくでもないことをいろいろ思い出したりとなにかと回顧モードになる。閉館時間までねばっていようと心に決めていてもすぐにムズムズして映画館に行っちゃったりしたなあ、とか。なんて、何年たってもわたしの行動パターンは一向に変わらず、今日もそこそこで作業を切り上げて映画館へと向かった。図書館の外に出ると、満月より少し欠けた月。ここの道はいつも月がとてもよく見える。

今日見た映画は、明日になったら忘れてしまいそうだけど、ほんわかと楽しかった映画。こういうすぐに忘れてしまいそうな映画の味わいが好きだったりする。

駅から歩く途中、通りがかりの本屋さんにふと足を踏み入れた。ちくま文庫の『志ん朝の落語』はまだかしらと思ったのだ。志ん朝はまだだったが、来月の新刊文庫の一覧が貼り出してあった。岩波現代文庫のところに、しっかりと戸板康二の『歌舞伎への招待』の文字があった。本当に出るんだ! 本当に出るんだ! と大喜び。それから、ちくま学芸文庫のところに、仲田定之助『続明治商売往来』の文字があるのでびっくり。ということは、もうすぐ『明治商売往来』が出るんだ! つい先ほど図書館で仕入れた記事のなかに戸板康二がこの本の書評をしている記事があって、ぜひとも読んでみたい! と思ったばかりだったのだ。あまりのタイミングのよさにとにかくびっくり、なにやら気が大きくなってしまって、帰宅後さっそく、今日仕入れた戸板康二による書評記事でぜひとも読んでみたいと思ったもう1冊の本、呉文炳著『余沫集』をネットで注文。

映画メモ