ひさしぶりに NHK ラジオの皆川達夫さんの「音楽の泉」をきくことができた。ピノック指揮の《ブランデンブルク協奏曲》。2番と3番を寝床でぼんやりと聴いて、なんという気持ちのよさだろうとすっかりいい心持ち。5番になったところで朝食に。第1楽章の後半のチェンバロの独奏のところは何度聴いてもいつ聴いてもクラクラ。どんよりと曇天の肌寒い朝、絶好の気分転換となった。
小雨パラつくなか、国立劇場へ。午前11時より文楽の『双蝶々曲輪日記』を見物。はじまりから「引窓」まではずっと気を張りっぱなしだったけれど、今回の上演は「引窓」と「橋本」が入れ替わって「橋本」が最後だった。「引窓」で力を使い果たし、初めて見た「橋本」でうっかり居眠りをしてしまい、ハッと目を覚ますと、父と娘の対面の場面が綿々と繰り広げられている。ああ、なんということだろうと己の醜態を思い、意気消沈。「橋本」と「引窓」を入れ替えたりするから寝てしまったじゃないか、と自らの失態を上演形態へ責任転嫁して気を紛らわす。
最後の『花競四季寿』は見物せずに劇場をあとにして、神保町へ寄り道。東京堂で本を見た。岩波の「図書」をもらったあとでコーヒーを飲んでのんびり。日曜日の神保町の喫茶店がなんだか好きだ。あらかじめ図書館でコピーしておいた、何年か前の国立劇場の上演資料集所収の『双蝶々曲輪日記』に関する論文をうーむとじっくりと熟読。たいへん素晴らしい論文でたいへん感激。先ほどまでの見物のひとときが、この論文のおかげで急にキラキラと貴重な体験になったような気持ちになった。なんていうことをしているうちに日が暮れて、帰宅後の夜ふけはなんとなく『夏祭浪花鑑』を読みたくなって浄瑠璃集をじっくりと読んだ。
芝居見物
- 文楽九月公演『双蝶々曲輪日記』/ 国立小劇場・第一部
購入本
- 高橋英夫『批評の運命』講談社文芸文庫(ISBN:4061983822)
- 興津要『落語 笑いの年輪』講談社学術文庫(ISBN:4061596756)