購入本

田中優子さんの一葉本は昼休みの本屋さん用にとっておこうと思いつつ、ずっと買い損ねていた。広重の「名所江戸百景」の《浅草田圃酉の町詣》と鏑木清方の《一葉女史の墓》がカラー口絵になっているのが嬉しい。11月下旬くらいに手に取っていたらさらに気分が盛り上がったに違いない。田中優子さんの文章を読むのはひさしぶり、まずは文章そのものがサッパリしていてそこはかとなくかっこいい。わたしの一葉読み始めだった、小学館版の菊地信義装幀の『全集 樋口一葉』全4巻やわが愛読書、前田愛著『樋口一葉の世界』平凡社ライブラリーISBN:458276004X)のことが、あとがきで言及されていて感激。常に初心にかえりつつ、一葉を読みつづけようと思うのだった。それから、こういう興味津々なテーマを扱ったコンパクトな新書は、巻末の参考文献がいつものたのしみで、本読みの芋づるがどんどん広がるのが嬉しいこと。

『さかさまの幽霊』は刊行を知ってから、たいへんたのしみにしていた本。今月の新刊文庫で一番たのしみだったかも。解説が高田衛さんというのが、また嬉しい。と、まっさきに解説を読んでしまったけれども、解説でさっそく大感激だった。《読者の皆さん、この本は、楽しんで読んで下さい。そういう本なのです。》と最後にいきなり語りかけられちゃったりして、いいなあ、と思った。その直前の、《服部幸雄が自己の学問を専門家や業界の独占物としてでなく、読書人のために、日本文化のより深い究明のために創りあげているからである。国文学や日本文化論においては、それがアカデミズムの本来のありようである。》という一節は、高田衛さんの仕事にもズバリ当てはまるような気がするのだけれども、こういう書物をこれからも見つけていきたいものだと思うし、こんな本がつくづく大好きだと思った。それにしても、『さかさまの幽霊』、目次を見ただけで思いっきりストライクゾーン、ワクワクしすぎて、読んでしまうのがもったいない。なんて言いつつ、さっそく読むのだけど。