末広亭・昼の部

末広亭の昼の部へ。開場前から並ぶということをしたのは初めてだったので、それだけで新鮮だった。家族連れがいたりして、いかにも日曜日のお昼でいい感じ。お父さんと小学生の息子、という組み合わせを寄席で見ると、いつも急に心があったかくなる。歌舞伎座ではなんとも思わないのに寄席ではいつも「いいなあ」と思う。

始まってみると場内はものの見事に満席で、初めて見るという人(たぶん)が多かったりもして、寄席ならではの濃厚な時間にひたった日曜日の午後。平日の夜の閑散とした寄席もいいけれども、休日の浅草や末広亭の満席の寄席もたまにはいいなあ、とたのしかった。

小三治の『ま・く・ら』か『もひとつ ま・く・ら』に出てくる、東海道五十三次万歩計、というのを入手。歩いた距離を蓄積することで、東海道のどのあたりに今いるのか、ということがわかるというのだけれども、まあ、ごく普通の万歩計。こ、これは、小三治さんの! と、ことのほか大喜びしてしまって、さっそく夜道をテクテク歩いて帰宅。その中途、ふと都筑道夫の小説のとある描写を思い出したりもして、歩くのはずいぶんたのしかった。帰宅後、どのくらい歩いたかしらと確認してみたら、案外少なくてがっかり。箱根はおろか品川も遠い…。京都にたどりつくまでに飽きてしまいそうではあるけれども、いい機会であることだし、しばらく歩いてみようと思うのだった。

落語メモ

トリの小朝が代演で川柳に。わたしとしてはむしろ嬉しかったくらいなのだけれども3回目の対面ともなると、さすがに毎回同じなので初めて見たときの衝撃がずいぶん薄らいでしまうのはいかんともしがたい。でも、川柳、また見たい何度でも、と強く思う。前半は去年出た著書の宣伝をしていた川柳、近日にある人よりその本を貸していただく運びとなっているので、今からとてもたのしみなのだった。こぶ平は2度目だったけど、前回聴いたのとおんなじ『ぞろぞろ』。初めてこぶ平を聴いたときはその高座の品のようなものがいいなあとことのほかいい印象をもったのだけれども、ほかの噺だとどんな感じなのだろう。まあ、また機会はいつでもあるので、次回のたのしみとしよう。襲名を控えたこぶ平が登場したときの場内の熱気がいい雰囲気だった。前月、馬生で聴いた『強情灸』は今回は歌武蔵、歌武蔵は登場するたびになんとなく嬉しい噺家さんなのだが、『強情灸』も歌武蔵ならではのよさがみなぎっていて、とてもよかった。初めて聴いた噺では『看板のピン』、今まで聴いた一朝さんで一番好きだなと思った。本日の寄席で落語的には一番堪能した一席。志げるのアコーディオン漫談、しゅう平の「ミュージカル落語」(大笑い)、川柳の『ガーコン』とで、「歌」色の強い本日の寄席でもあった。その昭和ムードが味わい深かった。