都営浅草線日記

遅い朝食はグレープフルーツで締める。フィルムセンターで映画を見て、京橋図書館で本を借りて、タリーズでコーヒー飲んでのんびり。このいかにも休日ののんきな時間がいいなあ! とご満悦。借りたばかりの本を適当に繰った。いよいよ『髪結新三』見物が迫っているので、このところすっかり忘れかけていた歌舞伎気分を無理にでも盛り上げねばならぬ、チケット高かったしと、国立劇場の上演資料集、『髪結新三』掲載号を2冊借りた。と、ここ一ヶ月忘れていた歌舞伎気分であったが、あーら不思議、ひとたび上演資料集を繰ってみると、いとも簡単に復活、上演資料集にはいつもなにかと興奮なのだった。大正4年8月帝国劇場の岡鬼太郎の劇評をまっさきに読んだ。次に読んだのは、明治40年9月宮戸座の三木竹二、源之助の新三を評している。源さんの新三とは! と、『髪結新三』の上演資料集を繰っているうちに、歌舞伎気分は盛りあがる盛りあがる。

そんなこんなしているうちに、ふと忠七のくだりで、三代目左團次のことを思い出した。『市川左團次芸談きき書』のことを思い出し、なんだか今すぐに欲しくなってしまった。こうしてはいられないと、奥村書店へ突進。と、『市川左團次芸談きき書』が欲しい! の一念で足を踏み入れた奥村書店であったが、『市川左團次芸談きき書』がどこにも見当たらない。1冊どころか5冊くらいありそうだと思っていたが、うーむ、どうしたことだろう。今日のところは諦めて、ほかの本を買った。それはそれで嬉しい。


昼下がり、所用で人形町へ。通りがかりに、切らしていた焙じ茶を買った。


日暮れ時になっても、『市川左團次芸談きき書』のことが頭から離れない。思いあまって、浅草のきずな書房に出かけることに。ここでも目当ての高島屋は見当たらず、それでもしかし、気になる本が何冊も見つかってたのしい。やっとのことで3冊選定して、外に出るとポツポツと雨降りで、空気がもたっとしている。もうそろそろ梅雨だなあと思う。

蔵前に向って歩く途中、駒形どぜうの前を通りかかった。久保田万太郎の句碑は薄暗くてよく見えず。「御輿まつまのどぜう汁すすりけり」。


市川左團次芸談きき書』は、帰宅後、京橋図書館に予約。奥村書店でなくて、京橋図書館へ行っていれば解決していたのであった。

映画メモ

宮川一夫キャメラは精緻な工芸品のよう。何度か挿入される車輪を映すショットの光と影に震える。

購入本

奥村書店にて。『かりの翅』『蜀犬抄』『歌舞伎の黎明』『武智歌舞伎』に続く5冊目の著書で、『武智歌舞伎』は未所持なので、わたしの武智コレクションでは4冊目になる。このあたりになってくると、ようわからぬ、という感じになりそうなのだけれども、まあ、読んでみるとしよう。いったいどこまでついてゆけるのだろう。


  • 長谷川伸『生きている小説』(中公文庫、1990年)
  • 「演劇学」郡司正勝先生追悼号(1999年3月発行)

きずな書房にて。小沢信男さんの本は田村義也の装幀で嬉しさ2倍。つい昨日入手したばかりの安田武『東京 昭和 私史』の書評が収録されていたりもして、先月の大事件、月の輪書林の目録《田村義也の本》の余波はまだまだ続きそう。

中公文庫で欲しい本が何冊もあっていろいろ迷った。富士正晴大河内伝次郎』がとても欲しかったのだけれどちと高かったので諦めた(500円以上になるとすぐに諦める)。隣にあった長谷川伸をペラペラめくってみると「三木竹二の俳句」という文字が目に入り衝動買い。長谷川伸の本を買うのは実は初めてかも。

郡司正勝追悼号はむちゃくちゃ嬉しい。この追悼文集の存在は『山口昌男ラビリンス』(ISBN:4336045070)所収の郡司正勝追悼文の初出誌として知ったのが最初だったけれども、実物を見たのは初めて。