本屋さんでムズムズ

朝は急に思い立って鈴木地蔵さんの『市井作家列伝』を読み返した。

昼休みはイソイソと本屋さんへ。講談社文芸文庫の新刊がまだ出ていないことを確認したあと音楽コーナーへ。吉田秀和さんの「新・音楽展望」の新刊がつつましく積んであった。ガバッと手に取り、目次を一瞥したあと、あとがきを立ち読み。あとがきを目にしたとたんポロポロと涙が出てきて困った。おそらくこれが吉田秀和さんの最後の文章(正確には口述筆記だけど)になるのだろう。胸が詰まる。鼻水をすすりながら、新刊コーナーへ移動すると、大村彦次郎さんの『時代小説盛衰史』が出ていてガバっと手に取る。吉田秀和さんと合わせていますぐにレジへ直行! と言いたいところだったけど幸か不幸か小銭入れしか手元になかったので、しばし立ち読みをするしか他にすべがない。ああ、今すぐに読みたいなあ。参考文献に戸板康二の『演芸画報・人物誌』があるのが嬉しいなあ。といつまでもムズムズ。と、そんなに広くない本屋さんでのほんの短時間に、激しい感情の起伏におそわれて、すっかり情緒不安定。なんだかくたびれた。

帰りは歌舞伎座の幕見席に行くつもりだったけど、出るのが遅くなってしまった。往生際悪く銀座へは行った。最後に教文館に足を踏み入れ、吉田秀和さんと大村彦次郎さんの間を何度か行きつ戻りつして、どないしよ、どないしよとふらふらと挙動不審者と化してしまい、本当に今日はくたびれた。新しい本は部屋の本棚の整理をしてから! と強く自分を戒めて帰宅すると、みはる書房の目録が届いていた。

戸板康二の『ラッキー・シート』を読了、小山清の『二人の友』を読み返す。アファナシエフのディスクでシューマンの《森の情景》を聴いた。