阿部知二の『冬の宿』を読む

寒くとも金曜日の朝は難なく早起き、イソイソと外出して喫茶店でコーヒーを飲んで、のんびり。突発的に持参した阿部知二の『冬の宿』を読み始める。いつかの趣味展で200円で買った第一書房本で、奥付を見ると昭和14年発行の第21刷(初版は昭和11年12月)なので、ずいぶん読まれた本のようだ。増刷の合間の書評が何本も巻末に収録されているのがそこはかとなくお得感、長谷川巳之吉自身もかなり長めの『冬の宿』論を寄せている。これらを読むのがたのしみだと、ワクワクと『冬の宿』を読み始めた。と、読み始めた当初は「ワクワク」だったものの、読み進めるにつれて小説の辛気くささにだんだん「トロトロ」となってくる。

昼休み、イソイソと公衆電話へ向かい、五反田古書展の当落の確認をする。結果は2冊の落選、わーい、2冊の代金分(7500円)でなにか別の本が買えるなアとやさぐれているうちに覇気なくなる。本屋さんへ行くのはなしにしてコーヒーショップへ移動。つまらぬので早く読んでしまおうと、阿部知二の『冬の宿』をトロトロと読み進める。

夜、西荻。寒さに震えながら本屋さんを何軒かめぐる。「日本古書通信」で篠原温亭が気になっていたところでふと島田青峰の本が目にとまった。春陽堂刊の『青峰集』(大正14年)という本。しばし迷ったものの今日のところは見送る。いつも行く喫茶店でコーヒーを読みながら、『冬の宿』をトロトロと読み進める。外は寒いし小説は辛気くさいしで、ますます覇気なくなる。