丸善に寄る

朝から異様に眠く、不覚にも寝坊。が、家事をいくつか省略したおかげでだいぶ時間があまった。少しでも目を覚ましておこうとコーヒーを飲んでいくことにする。読みさしだった阿部知二の『冬の宿』を早々に切り上げようと、最後まで一気読み。付録の各氏の書評を斜め読み。伊藤整の文章を読んで、英文学者の系譜いろいろ、を思っているうちに、みすず書房刊の川口喬一著『昭和初年の「ユリシーズ」』を買ったきり読んでいなかったことを思い出し、いかんいかんと思う。まだ時間があったので、長らく読書中のディケンズの『ピクウィック・クラブ』を繰る。『冬の宿』から一転、急にさわやかな心持ちになり、「ディケンズ讃!」で胸がいっぱい。クリスマスまでに読み終わるはずだったけど、どうやら無理そう。でもずっと読んでいたいから、このままずっとチビチビと繰っていくのだ。


あっという間に夜になった。神保町を経由して歩いて帰ろうと思っていたけれど、もう力が出ない。今日は地下鉄で帰ることにする。その前に、せめて丸善に出でてみんと、寄り道。あれこれ気になる新刊を見てまわっているうちに、力がなかったはずなのに、急にウキウキしてくる。

東京駅前の丸善は、今日みたいに力が出ないときに来ることが多く、いつもひとたび足を踏み入れると一転、気が晴れてウキウキと家路につくということになる。上の方の洋書や絵本から、文具ものぞいて、下の文芸書までのんびりとめぐるのがいつもとてもたのしい。この空間をめぐるのが好きだ。まさしく「丸善讃!」という感じ。と言いつつも、お買い物をすることはめったになくて、見てまわるだけというのがほとんど。「見るのはとてもたのしくし好きな本屋さんだけど買い物には結びつかない」度ではわたしのなかではジュンク堂と双璧なのだった。


帰宅すると、古書目録が何冊も届いていた。みはる書房の目録で、前々から読みたかった喜多村緑郎の『芸道礼讃』が「川尻様献呈署名」で2000円なので、思わず申し込んでしまいそうになった、けど、すんでのところで踏みとどまった。危ないところだった。