広瀬千香さんを知る。

朝は今日もモーツァルトのシンフォニー。第39番を全篇通して、いつものアーノンクールで聴く。《プラハ》と違って、K.543 の方は全曲すみずみまでおなじみ。K.543 の方を愛するあまりに同じディスクに収録の《プラハ》の方がちょいとお留守になっていたようだ。それにしても「あまりきちんと聴けていない」音楽のなんと多いことだろう。と、バッハの平均律の第2巻を聴きながら、イソイソと身支度をして、今日もずいぶん早くに外出。


昨日の夜、手持ちの「こつう豆本」を整理していたら(あふれんばかりにある)、広瀬千香著『続・私の荷風記』が出てきて、狂喜乱舞だった。3年ほど前だったかアクセスに足を踏み入れるたびに「こつう豆本」を買っていた時期があって、その頃にとりあえず買っておいたものだと思う。こつう豆本はこうしてとりあえず買っておくと、あとでかけがえのない1冊を手にしていたことに気づくことが多い。徳永康元の『黒い風呂敷』しかり、広瀬千香さんの『続・私の荷風記』しかり。そんなこんなで、一夜明けて、コーヒーを前に満を持してという感じに、広瀬千香さんの『続・私の荷風記』を繰った。ボロボロと感激。書いている内容もさることながら、まずは廣瀬千香さんの文章そのものがとてもよい。なんとすばらしい人物がいたことだろうと、こういう人が存在したという事実を知ったというだけで感激。たぐいまれな学識を持ちながら、自らの名を冠した著書を残すということに謙虚という点では徳永康元と同様で、柴田宵曲もそんな書き手で、「こつう」周辺にはそういう人がたくさんいる。わたしがもっとも好むのはそういう書き手だ。

廣瀬千香さんのあとは、野呂邦暢著『古い革張椅子』を時間いっぱいまで読んだ。


日没後、京橋図書館へ本を返しにゆく。廣瀬千香さんの余韻を胸に図書館へ歩いた。廣瀬千香さんの筆による、この界隈の描写が嬉しかった。雑誌コーナーの「きょうの料理」最新号で暗記した有元葉子レシピをもとに、帰宅後、さっそく蒸しパンを試作する。出来上がりはまあまあというところ。ドシドシ改良せねばならぬ。あとかたずけを終えたあとは、野口冨士男の『わが荷風』を読み返したり、急に思い立って竹下英一著『岡鬼太郎伝』を繰ったりして、夜がふけた。