海野弘『私の東京風景』を繰る。

バタバタと家事を終わらせイソイソと外出、金曜の朝専用のちょいととっておきの喫茶店でコーヒーを飲んで、ふうっとひと息ついたところで、おもむろに『海野弘コレクション第1巻/私の東京風景』を取り出し、あちこち繰って、ウキウキ。発売まなしに東京堂で「おっ」と手に取り、ペラペラと立ち読みしたとたん、堀切直人著「浅草」四部作を読了したあかつきに満を持して読みたいと思ったのがこの本だった。めでたくその日を迎えることができてよかった。いろいろな媒体に掲載された文章を編んで一冊にまとめた切り抜き帖のような本が日頃から大好きなのだけれど、この『私の東京風景』はまさにその典型。いろいろな媒体にいろいろな時期に発表された文章が「私の東京風景」というタイトルに収斂している、その収斂具合が初めてこの本の目次を店頭で見たとき、実にいいなと思ったものだった。と、パラパラと一通り繰ったあとで、姿勢をただしてはじめのページからじっくりと順繰りに読んでいくことにする。とある文の、松屋裏の奥村で岩田豊雄著『新劇と私』を手に取って……、の導入のところで「わたしもその本、持ってるッ」とはしゃぐ。と、はしゃいで文章を追ってゆくと、おお、こういう展開になるのかあと唸る。すばらしい。唸っているうちに、今日は HOUSE OF SHISEIDO に行くとするかなと、朝っぱらから寄り道計画で頭のなかがいっぱい。

私の東京風景 (海野弘コレクション)


昼休み、本屋さんへ。PR 誌を4誌入手し、今日は大漁だわいと興奮、いてもたってもいられずコーヒーショップへ移動し次々に眺めるも、うーん、特になんということもなかった。とっとと切り上げて、細切れ用に持参している近藤富枝著『馬込文学地図』(中公文庫、奇しくも解説は海野弘)の続きを読む。


日没後、朝の寄り道計画が泡と消え、せめて京橋図書館へ出でてみんとテクテクとマロニエ通りを歩く。本を返してまた借りて、家に向かって歩を進める。日本橋を通って、神田界隈にさしかかったところで、柳田國男の『石神問答』を借りるのを忘れたことに気づく。喫茶店に寄り道して、海野弘をおしまいのページまで読んだあと、借りたばかりの「東京人」先月号(交通博物館特集)を眺める。あともう1回くらいは交通博物館に行きたいなと思う。東京ステーションギャラリーにて開催の《鉄道と絵画》展(http://www.ejrcf.or.jp/archives/exhibition/detail.asp?id=108&index=1)に行きたかったなあと今さらのように思う。