庄野潤三の『旅人の喜び』を繰り、神保町でお買い物。

早起きしてイソイソと外出、喫茶店でコーヒーを飲む。庄野潤三『旅人の喜び』(河出ペーパーバックス、昭和38年)を繰る。昨日の午後、長年行きたいと思っていた念願の天誠書林に初めて足を踏み入れ、「欲しい本がありすぎる、ハテどうしたらよかろうなあ…」と予想通りの散財をしてしまったうちの一冊。パッと手にとって今すぐに読みたいと思った本だった。というわけで、さっそく読み始めた次第。

《「旅人の喜び」は昭和31年5月から翌年2月まで雑誌「知性」に連載された。29年「プールサイド小景」で芥川賞を受賞後、全力を傾けて取り組んだ長篇小説であり、日常生活の完璧な小説化という庄野文学の真髄を発揮して、「静物」(新潮文学賞受賞)の起点となった記念碑的な作品である。》という作品紹介と、平凡な結婚生活を送る女性が主人公ということで、がぜん読んでみたくなったのだった。庄野潤三は初期から中期にかけてくらいが実は一番好きかもと前々から思っている。ひさびさに庄野潤三のこの時期の小説を読んで、「そうそう、この感じ」とあらためて思って、嬉しかった。こうしてひょんと読む機会がめぐってきてよかった。こういうことがあるから、古本屋には行くものだと思う。おしまいのページでヒロインの心に残る、英名が「旅人の喜び」というのはいったい何の花なのだろう、家に帰って辞書で調べてみようと思った。(ト家に帰って調べると、それはクレマチスだった)。


夕刻、丸の内カフェに寄る。小岩井のビンの牛乳110円を飲みながら、「室内」最終号をペラペラと繰って、思っていた以上に見入ってしまって、おっとこうしてはいられないとイソイソと外に出て、神保町まで早歩き。

間に合ってよかったよかったと、書肆アクセスに足を踏み入れて、あれこれ本を見る。注文していた広瀬千香著『思ひ出雑多帖』(日本古書通信社、1990年)を買う。念願の本を入手できて胸がいっぱい。勢いにのって、未所持の「こつう豆本」のうち、長谷川勝三郎『澄生さんと私』を手に取る。今月中に川上澄生美術館(http://www.city.kanuma.tochigi.jp/Kyouiku_a/Kawakami/index_kawakami.htm)へ遠足に行けたらいいなと思う。そのあとも、昨日とおんなしように「欲しい本がありすぎる、ハテどうしたらよかろうなあ…」と眉間にシワが寄る。今日のところは、買い損ねていたスムース文庫2冊、岡崎武志著『詩集風来坊』と生田誠山田俊幸著『明治美術絵葉書』を買うことにする。これでわが書棚の「sumus」はめでたく完本なり(第1号は ex だけど)。

アクセスで買い物するといつもそれだけで嬉しい。と、東京堂へスキップして(心のなかで)、閉店時間まで本を見る。広瀬千香さん入手を記念して、念願の東洋文庫山中共古『共古随筆』を買うことを決心。東京堂で買い物できるといつもそれだけで嬉しいなと、喫茶店に寄り道して、コーヒーを飲んで、ひとやすみ。広瀬千香の文章を読み返して、いつまでも嬉しい。買った本を一通り眺め終わったあと、庄野潤三『旅人の喜び』の余白に入っている、『ニューイングランドびいき』と『三つの葉』を読んだところで、ちょうど閉店時間となった。『ガンビア滞在記』を読み返したくてたまらない。