文化生活一週間 #19

今週のおぼえ帳

雨降りの土曜日、吉祥寺で母と待ち合わせて、母が見たがっていた『かもめ食堂』を見にゆく。いざたどり着いてみると、この映画館は小学生の頃、夏休みに母と『ビルマの竪琴』を見た映画館ではないかと、いったい何年ぶりに来ることになるのだろう、まだあったのかと急に懐かしくなる。同じく子供時分の夏休みに母と見た記憶のある映画『南極物語』の話になる。『南極物語』に実は山村聡が出ていたことを知っていたかと、実はわたしもごく最近知ったにわか知識を披露すると、大受け。調子にのって、岡田英次も出ていたんですって……以下略、とかなんとか言っているうちに映画館が暗くなった。

曇り空の日曜日、ひさしぶりにふらっと鎌倉へ出かける。お目当ては近代美術館の収蔵品展。美術館に向かって小町通りをテクテクと歩いてゆくその途中、いつもの通りにまずは芸林荘で本を見る。さっそく宇野浩二『子を貸し屋』新潮文庫1994年復刊(200円)を見つけて、わーいと狂喜乱舞。解説は川崎長太郎なのでよろこび二倍。勢いにのって、和田芳恵『おまんが紅・接木の台・雪女』講談社文芸文庫(300円)も買うことにする。足どりかるく、いつもの通りに次は木犀堂へ。長らく探していた野口冨士男『虚空に舞う花びら』花曜社(1700円)をさっそく見つけて、またもやわーいわーいと狂喜乱舞。わが書棚の野口冨士男のエッセイ集はこれでめでたく完本となった。ゴールが木犀堂となったのがひときわ嬉しい。

ひさしぶりの近代美術館は実にすばらしかった。好きな絵をたくさん見ることができた。初めて見た絵と再会する絵とのバランスもちょうどよかった。とりわけ関根正二のところではっと息をのむ。一番好きな美術館を挙げるとすると、迷うことなく鎌倉の近代美術館。その空間でひときわ好きな絵ばかりを静かに見ることができたのだから、言うことなしの日曜日の午後だった。鏑木清方美術館のあと、大佛次郎邸界隈を散歩して、その黒板塀の細い路地を満喫。江ノ電にのって、由比ガ浜鎌倉文学館を見物、庭園で薔薇の花を見て、由比ガ浜通りをテクテクと鎌倉駅へ。駅前のカフェロンディーノという喫茶店に初めて入った。とても気持ちのよいお店だった。コーヒーを飲んでプリンを食べる(セットで600円)。日曜日にふらりと通りがかりの喫茶店に入って、新聞が置いてあると得した気分。朝日の書評欄を見ると、小三治大佛次郎の『天皇の世紀』のことを書いていた。ちょうど1年前の5月末の鈴下の独演会のマクラを思い出す。それにしてもロンディーノはたいそう居心地がよかった。