内堀弘『ボン書店の幻』を再読し、『石神井書林日録』を棚に戻す。

朝、喫茶店でコーヒーを飲む。週末に再読するつもりが果たせなかった、内堀弘『ボン書店の幻』(白地社、1992年)を取り出す。

この本をはじめて読んだのはちょうど5年前のことで、読了後ほどなくして石神井書林の目録をはじめて手にとることとなり、その年の秋には晶文社から『石神井書林日録』が出て、たまたま立ち寄った京都の三月書房で買うというめぐりあわせになったりして、そのあたりのことはいまでもはっきりおぼえている、なつかしいなア! と、ひととおり懐旧の念にひたったところで、おもむろに『ボン書店の幻』を繰り始めたのであったが、それにしてもしみじみすばらしい本だなア! と、あらためてシンシンと思う。

ボン書店は第一書房の「豪華な装丁」とすべての点において逆、という一節が登場し、ボン書店は「瀟洒」という点では第一書房をはるかにしのぐ、というふうに続く。長谷川郁夫『美酒と革嚢』熟読の直後に読むというめぐりあわせがいかにもなのだった。


夕刻、スッキリしたよいお天気、いよいよ秋日和だなあと機嫌よく、歩いて帰る、その途中、神保町を通りかかる。日本特価書籍にて、先週買い損ねた、中村哲郎『歌舞伎の近代』(岩波書店、2006年)を手に取り、欲しいなあ、はやくじっくりと読みふけりたいなあ、定価6090円が5480円、奇しくも『美酒と革嚢』と値段がまったくおんなじだなあ云々と、先週思ったことを今週も思う。そして、今週も『歌舞伎の近代』はあきらめて、スゴスゴと家路に向かう。


あとはもう寝るだけというひととき、あともう少しで読了の『ボン書店の幻』を読みおえてしまおうと思いつつも、古本屋に引き取ってもらうべく積んである本の山に内堀弘石神井書林日録』(晶文社、2001年)があるのが目に入った。うーむ、『ボン書店の幻』は絶対に手元においておきたいけど『石神井書林日録』の方はそうでもない、なぜだろうと、ほんの気まぐれに『石神井書林日録』を繰ってみたら、つい夢中。前回読んだときよりもはるかにぐっとしみいり、『石神井書林日録』のすばらしさがやっとわかってきたのが嬉しい。本はワインみたいに熟成する。『石神井書林日録』をあわてて書棚に戻して、寝る。