吉祥寺へ

foujita2003-09-07


ラジオを聴きながら朝ごはん。日曜日は8時から皆川達夫さんによる音楽番組をやっているのがそこはかとなく楽しみ。スイッチをひねったとたん耳に入った曲は明らかにモーツァルト、楽器の調子からいうと何かのディヴェルティメントだなあと思ったところで、楽章ごとに皆川さんの説明が入るので曲名はすぐに判明、ニ長調 K251、お姉さんナンネルに捧げたフランス風行進曲付きの1曲だ。この曲を聴いたのは初めてだ。あまりに優美であまりに美しくてうっとりと気が遠くなりそうだけど、でもそこはかとなく悲しくなってくるというモーツァルトの典型を味わう。オーボエの響きがとりわけ印象的だった。そのあとベートーヴェンとドヴォルザーグのロマンスが流れている頃にはソファでひと休み。『渡辺一夫敗戦日記』をめくる。

吉祥寺へ出かける。どんよりと曇っていた。お昼はロールキャベツ。吉祥寺に来るたのしみのひとつはダンディゾンでパンを買うこと、と足をのばしてみると大混雑、やっとのことで豆乳食パンを買って一安心したあとで、あちこち歩いた。

上の写真は井の頭公園の池の鴨。冬になるともっとたくさんの鴨が集まるに違いない、冬になるのが待ち遠しい。鴨よ! と、なぜか鴨を見るといつもはしゃいでしまうのだった。帰り、ラピュタ阿佐ヶ谷に寄った。川島雄三の『花影』を見た。

今日届いていた「書評のメルマガ」、目当ての本読みの快楽の金子さんの連載「読まずにほめる」に、一昨日買ったばかりの『装丁探索』が取り上げられてあった。嬉しい。


映画メモ

池内淳子が素晴らしかった。暗い表情の美人、自分の人生などすっかり諦めたふうに流されていって、でもどこかで達観している感じもする薄幸でお人好しの「最後の女給」、原作のヒロインのイメージにぴったりだった。バーの椅子で背筋をのばしてお酒を飲むときのひじをついて袖の袂から白くて細くてまっすぐな腕がスッと現われるさま、酔ってくると下唇をなめる表情が印象的。アパートの前にあるポストが映画全編で視覚的アクセントみたいになっている。ラストでヒロインはそこに遺書を投函する、といったような映画的処理が見事で、夜桜のシーンがその絶頂だった。ヒロイン登場の瞬間、バーの赤い看板から室内の控え室の暗闇へと移動するときのカメラにクラクラ。カラーだけど、全編、白黒画面の光と影を見るかのような感覚だった。次に池内淳子がスクリーンに姿をあらわすときはさっきと違う着物を着ていることで、時間の経過がわかるという箇所などなど、池内淳子の着物を見る愉しみもかなりのもの。きもの映画としても秀逸だった。