四月と十月

日曜日に見た川島雄三の『花影』は着物のみならず、ヒロインの住むアパートのさまが40年前の「暮しの手帖」のインテリアページみたいで、とても好きだった。それから、死ぬまぎわに池内淳子が銭湯に行くシーンがあって、銭湯と着物のかもし出す雰囲気がいいなあと思った。

梅雨でじめじめしていた頃、ふと思い立って銭湯に出かけてみたら、すっかりハマってしまって、毎日のように行くようになった。これじゃあんまりぜいたくなので、やがて週に1回くらいにするようにしたのだったが、いつのまにかごぶさたしてしまっていたのだった。で、『花影』を見て、ふたたび銭湯熱がモクモク。

近所には二軒の銭湯がある。そのうちのひとつはお湯がえらく熱い。その熱い銭湯に今夜ひさしぶりに出かけてみた。銭湯から帰ってラジオをつけると、ちょうど「ラジオ名人寄席」というタイミングになるのがもっとも理想的。今日は水曜日なので「平成落語家ジョッキー」、今週はたい平さんの番だった。

雑誌「東京人」今月号は小津特集、小特集に《文士お気に入りの洋菓子》に戸板康二が登場していて大喜びしていた折、ふと後ろの方のページをめくってみると、お菓子の挿絵がとても素敵でうっとりだった。クレジットを見ると、牧野伊三夫さんの挿絵だったのでなおのこと嬉しかった。

と、これを機にふと検索してみたら牧野さんのインタヴュウ記事を見つけた。お話や作品のみならず(風呂会!)、その背後の火鉢の上のやかんなどの背後のインテリア、もうすべてがひたすら「いいなア」という感じ。

それから、牧野氏が「四月と十月」という雑誌を出していることを不覚にもこのたび初めて知って猛烈に欲しくなり、月光荘に行けば買えるのかなと出かけてみた。創刊号と最新号を買ってきた。なんだかもう嬉しくてしょうがない。最新号をめくってみたら、さっそく「チェーホフ」とか「熊谷守一」なんていう固有名詞がとびこんでくるし。来月、次号が出る。バックナンバーも少しずつ手に入れるつもり。

ところで明日は十五夜だ。銭湯帰りのときは月は雲に隠れていたけど、家に帰る時間はまるくて大きい月に「おお!」と見とれてしまった。「ラジオ深夜便」、山田稔さんのお話、今夜は3回目。