樹の花にて

日没後、銀座マロニエ通りを築地の京橋図書館へ向かって直進、途中奥村書店に立ち寄る。ふと、食味コーナーから、小島政二郎編『随筆あまカラ』(六月社、昭和31年)を手に取る。徳川夢声獅子文六……といった目次の並びを見てふらふらっと衝動買い。1000円。この本、時折挿入される関西の料理屋の白黒写真が実にいい。昭和通りを越えて、奥村書店2軒目、久生十蘭全集の月報の吉行淳之介の文章を立ち読みした。

京橋図書館へ本を返してまた借りる。取り置いてもらっていた『定本武智歌舞伎』(三一書房)の歌舞伎篇の第1巻と第2巻を閲覧、とても立派な本、古書価格はいかにも高そうだ。武智鉄二の文章は今までほとんど読んだことがなかったかも。戸板康二とは全然違う切れ味の文章になぜか心がスウィング、などと思っていたら、第2巻の巻末に戸板さんの文章を発見。今日のところはとりあえず戸板康二の解説と「菊吉の寺子屋」という文章をコピー。第2巻の武智鉄二の肖像写真を見て、ふと市川崑の『ぼんち』のことを思い出してしまった。

図書館を出て、そのままいい気分で歩いていって、突然思い立って樹の花に寄り道。フレンチローストのコーヒーを飲みながら、図書館で借りたばかりのとある料理本川本三郎さんの『はるかな本、遠い絵』のページを繰った。

購入本