川島雄三・青空・十二月文庫

下北沢で映画を見ようと外出したものの、時間を間違えていたことに気づき、しばし駅前のドトールで読書。昨夜なんとはなしに読んでいたらついハマってしまった、クンデラの『裏切られた遺言』をぼーっと読んだ。ベートーヴェンピアノソナタ作品111とフォークナーの『野生の棕櫚』とを類推している箇所があって「おっ」となった。アファナシエフチェーホフブラームスを類推していたのを思い出した。古今東西類推メモみたいなのを作りたい気がする。ということをしているうちに映画の始まる時間が迫ってきたので、シネマ下北沢を目指して大雨のなか競歩

今日は川島雄三の二本立て、『人も歩けば』と『特急にっぽん』を見た。『特急にっぽん』は獅子文六の『七時間半』の映画化。予想通りいまいちだったけど、そもそも原作が構成はとても面白いものの文六さんの中ではちょっと弱かった。でも獅子文六の本を読んだあとで映画を見るというめぐりあわせがたのしかった。団令子がヒロインだったけど、原作を読んだときのイメージはわたしのなかでは新珠三千代、フランキーはぴったりな配役。それよりもなによりも、ついでに見た『人も歩けば』が素晴らしかった! こういう映画をたまにでも見られれば人生願ったりかなったり、ということを思わせてくれる映画。饗庭篁村の小説『魂胆』みたいだった。いい映画だったなあ。

映画館の外に出てみると、あんなに激しく降っていた雨がやんでいて空には一面の青空。先月の圓生忌の落語会のとき、外では雷が鳴っていて、小三治がその日のマクラで、ここに来るとき雷で危ないのでしばし車を止めていたら雷雲の向こうにそれはそれは見事な青空が見えたと言っていたのを思い出した。あの日小三治が見た青空もこんな感じだったに違いない。

十二月文庫のことを思い出してふと行ってみようと適当に歩いていくとすぐに池ノ上に辿り着いた。十二月文庫でコーヒーを飲めたらいいなと思っていたのだけれども、今日も先客がいた。店内にはベートーヴェンの田園。いい気分で棚を眺めて、芝木好子著『春の散歩』(講談社)を買った。東北沢の駅まで歩いて小田急に乗って帰宅。

映画メモ

  • 『人も歩けば』川島雄三/シネマ下北沢《喜劇特急》*1
  • 『特急にっぽん』川島雄三/シネマ下北沢《喜劇特急》*2

購入本

  • 芝木好子『春の散歩』(講談社、昭和61年)