ディアベッリ変奏曲

本日のいただきもの:「銀座百点」1993年4月、戸板康二追悼掲載号。(狂喜乱舞)

聴いている音楽

10年近く前に買った本なのだが、2年に1回くらいの頻度でページを繰って、そのたびに「えー、この人が」とたまに驚いたりしつつ、つい毎回楽しんでしまう。今回は土屋恵一郎さんにびっくり。《私は「変奏曲」狂である。はっきりと形式があるものより、時間の流れのなかで、自由な音楽の動きにのって踊っていたい。変化しながら持続していくもののなかで、音楽の縁をたどりながら、次の変化のうちへ飛び込んでいくのが好きだ。》と、変奏曲好きにとっては我が意を得たりな一節が嬉しかった。ラヴェルのピアノトリオについて《ためらいがちな音楽の動きのなかから、音楽の輪郭が見えてくる時の快感があって、その瞬間が嬉しい。》というふうに書いていて、まだ知らないこの曲、急に聴いてみたくなった。

ところで、長らくの懸案にベートーヴェンの《ディアベッリの主題による変奏曲》があった。ベートーヴェンピアノ曲のなかでも、この曲、いまだにきちんと聴いたことがなかったのだった。というわけで、しばらく《ディアベッリ変奏曲》強化月間にすることにして、今朝から聴き始めた。バックハウスのディスク。

朝起きてお弁当つくって御飯を食べて家事一通り済ませたあとの、さあ出かけようという時間まで、いつも1時間近く時間があく。この時間にたいてい1枚のレコードを再生している。再生直後は適当にくつろいで、しばらくして身支度を始める。この時間の音楽聴きがなんだかいい。レコードが長過ぎると途中で出かけなくてはいけなくなるけれども、《ディアベッリ変奏曲》はちょうどよさそうな感じだ。