古本寄り道日記

foujita2003-10-30


ふと新宿の伊勢丹に行きたくなって帰り丸の内線に乗り込んだ。伊勢丹のあとふと魔がさして、また丸の内線に乗り込んで荻窪へ。いつもの通り、ささま書店に長居。今日はいい本を買うことができた。


たしか『荒小屋記』でだったと思う、この本の存在を知って以来、なんとなく気になっていた。串田孫一がそれまでに住んだ家にまつわる回想文集。串田孫一自身による挿画が実にいい感じで、とても素敵な本。さっそく帰りの電車の中で読みふけった。串田孫一も山の手育ちだ。表題の「花火の見えた家」というのは、神田駿河台の現在の山の上ホテルの場所にあったコンドル博士設計の洋館、招魂社と両国の花火の見えた瀟酒な洋館は大震災で焼けてしまったとのこと。東京本としても読むことができる。

  • 筈見恒夫刊行会編『筈見恒夫』(昭和34年)

戸板康二の本で興味津々になった数多い人物のひとり、筈見恒夫の一周忌に刊行された記念本。戸板康二十返肇とともに東宝の砧撮影所のプロデューサー会議に参加しており、彼らを招いたのが藤本真澄。そのあたりの戸板さんによる記述で知った人物で、渋谷の「とん平」の常連という点でも印象深かった。野口久光による装幀とスケッチがとてもいい感じ。

「筈見恒夫五十年」としてその生涯を人々の証言を交えつつたどったり、筈見の映画論を収録したり、日記(昭和20年から21年にかけてと昭和31年の欧州旅行日記)を抜粋して収めたり、写真を多数収録したりと、年譜など資料も行き届いている。単なる追悼文集ではない1冊まるごと「筈見恒夫」となっている。日本映画好きにとってもとても面白い内容。こんな感じの体裁で戸板康二の本を作れないかしらと思わず妄想してしまうような、うらやましいくらい秀逸なつくりだった。