小三治独演会めぐり

foujita2003-11-03


10月末日は鈴本で小三治独演会を聴いた。

小三治は『穴どろ』と『付き馬』。いつものマクラもたのしく、高座もたいへん堪能。『付き馬』は生の高座で聴いたのは初めてだった。居残り佐平次的な描写のみならず、浅草の道中のところと苦りきった早桶屋のくだりがとてもよかった。

などと感想は思いっきり手抜きだけども、心にしんしんと残る小三治独演会。一度聴くととめどなく出かけたくなってしまう。連休最終日、またもや小三治独演会に出かけた。

鈴本と噺は同じかしら、それもまた乙とちょっと楽しみだった。結果は『小言念仏』と『穴どろ』。『穴どろ』だけ共通していた。マクラは同じことを言っているようでいて微妙に違っていたりもする。鈴本ではしゃべってなかったことで今回とても面白かったのが、小田急線の喜多見(だったかな)で「金明竹」という竹を28000円で買ったというお話。「金明竹」という竹が売っているなんて! 節と節の間が黄色くなっていて縦が青がかっているらしい。今回の鎌倉名人会は第37回なのだが、その第1回目のとき小三治は「金明竹」をやり、同じ日に志ん朝が「品川心中」を高座にかけたという。乗り換えの東京駅で「東京人」の志ん生親子特集を買って眺めていたばかりというタイミングだったから、なんだかしみじみしてしまった。とりあえず、小三治金明竹の話がとても面白かったので、「金明竹」の言い立てをしばらく追求したいと思っている。さいわい寄席でよくかかる噺なのでちょうどよい。と、矢野誠一さんの『落語読本』(文春文庫)を帰宅後まっさきに開いた。

  • 雑誌「東京人」12月号《落語に生きた親子三名人》

東京駅のホームで突然見つけてびっくりして即買い。雲助師匠が登場しているのがまずは嬉しかった。雲助ホームページで綴られている馬生師匠の回想が大好きで、それを機に去年の今頃、馬生のディスクを聴いたり、ビデオを図書館で見たりしていた。ビデオは「笠碁」で上品な高座のたたずまいに見とれて、つい志ん朝にばかり夢中になっていたけれども、馬生にこそ注目せねばとずっと思っていたのだった。雲助師匠のディスクで「つづら」と「千両みかん」を収録したものがあって、特に「つづら」に圧倒されていたのだったけども、馬生師匠ゆずりの噺で今は雲助さんしかやり手がいないということを初めて知った。「つづら」は雲助ホームページで速記を読むことができる。矢野誠一さんも馬生のおすすめディスクとして「つづら」を挙げていた。馬生の「つづら」を聴かねば!

などなど、全然整理しきれていないのだけども、先月の「BOOKISH」といい今回の「東京人」といい、立て続けに落語聴きへのよい刺激を得ることができて、嬉しい。