立冬・一の酉

気をつけていたつもりだったのに、急に風邪っぴきで、ここ2、3日は、ただもうくたびれた。今日は一日床に入って目を覚ましたり寝たりを繰り返して、夕刻目を覚ましてみると、ひさびさに爽やかな目覚め、やっと全快したような気がする。やれ嬉しや。

でも、ちょっと本が読める程度の風邪っぴきだと、いつもとちょっと違った気分で読書ができたりするのが楽しい気もする。今回眺めていたのは『全日記小津安二郎』と『久保田万太郎全句集』。2冊とも寝床でぼーっと眺めるのに格好な書物で、実によかった。久保田万太郎の方は、戦後の『流寓抄』と『流寓抄以後』を主に見ていた。昭和20年代に他界した歌舞伎の役者の追悼句が矢継ぎ早に出てきたりと、なにかとぐっとくる。戸板さんも書いていたけれども、万太郎の贈答句を抜粋して1冊こしらえてみたら面白そう。

あと、『流寓抄』では「大阪にて、ゆくりなく故水上瀧太郎を知れる人に逢ふ。その人、ありし日のその豪酒ぶりについてつぶさに語る」という前書き付きの「熱燗のまづ一杯をこゝろめる」という句にジーンとなった。ちょうど古本屋から「三田文学」の水上瀧太郎追悼号が届いたところだったのだ。

11月といえば酉の市に一葉忌。「一葉忌ある年酉にあたりけり」という句がある。酉の市の頃になると、万太郎の季節だなあと思う。湯豆腐を食べたい。