ムターと馬生

朝起きると、窓から見える空の青がとてもきれいだった。

聴いている音楽

ここしばらく朝はいつも、ベートーヴェンのディアベッリ変奏曲を聴いている。だいぶ耳になじんできた。とてもいい。内田光子さんがこの曲について、「はじめは凡庸なテーマを茶化している感じなのに、変奏が重なるにしたがってどんどん深淵に入ってゆく、どん底へ向っている」というようなことをおしゃっていたのを思い出す。うん、まさしくそんな感じ。今はバックハウスで聴いているけれども、そろそろ他の演奏も聴いてみたくなった。シュナーベルがいかにも似合いそうな気がする。

今朝はお弁当を作らなかったので時間がたっぷりあった。空の青を見て、ベートーヴェンのスプリングソナタのメロディがふと頭に浮かんで、ムターのディスクを取り出した。ヴァイオリンソナタ第4番の第二楽章からディスクを再生。ここの音楽が大好きで、いい演奏はほかにもたくさんあるかもしれないけれども、第4番の第二楽章だけはムター以外の演奏は考えられないくらい絶品だとわたしは思う。ここから聴いてフィナーレに行って、スプリングの第一楽章が始まるという、この一連の流れがムターの演奏で聴くとくっきりとひとつの流れになっていて、それがとてもよい。

と、ひさびさにムターを堪能した今日、帰り道、銀座をふらふら。山野楽器のクラシック売場でいろいろディスクを物色。あれやこれと考えていたディスクが狙ったかのように売っていない。散財しないで済んでよいのかもしれぬが。ムターの新譜、プレヴィンのヴァイオリン協奏曲の輸入盤が売っていた。待ちに待っていたはずなのに今日まで買い損ねていた。クラシック売場では1枚のみのお買い物。

夜は、さっそくプレヴィンのヴァイオリン協奏曲を流した。以前、ペンデレツキの協奏曲をムターのディスクで聴いたときみたいに、耳にすぐになじんでくる感じ。かっこいい。


落語メモ


山野楽器では落語のディスクも買った。

  • 十代目金原亭馬生『辰巳の辻占/お初徳兵衛/相撲風景』(ビクター落語)

1500円のこのシリーズ、ジャケットデザインは思いっきり安っぽいが、圓生のを去年の今頃買い漁っていたなあと懐かしい。このシリーズの圓生の火事息子が好きだ。このシリーズ、馬生師匠の1枚目をとりあえず買ってみて、家に帰ってさっそく1席聴いてみた。今日は「辰巳の辻占」。大当たり。一度聴いて大好き。初めて聴いた噺だったけども、おじさんと若旦那のやりとりが面白いし、すれたお女郎がイカす。サゲも秀逸。噺としても面白いし、馬生師匠の語り口に惚れ惚れ。しばらく馬生師匠を追求してみよう。ディスクの帯には「日本画を思わせる、しなやかな芸」と書いてあった。