歌舞伎座昼の部

id:bonborikingyo さんの日記で、昨日から富十郎が『船弁慶』に復帰したことを知ってジーンとなった。休演は大ショックだったけれども一夜明けてみると、だいぶ平静になっていた。無理しないで休んで次回に万全で、というようなことを思ったのだったが、いざ復帰を知るとやっぱり嬉しい。よかった。

というわけで、意気揚々と歌舞伎座・昼の部へ。仁左衛門の『石切梶原』は、刀の鑑定、大庭が退場したあとの物語のところ、などなど、各見せ場の仁左衛門の「かたち」がとてもよくて、ひたすら見とれた。梶原は静止しているところが多くて、六郎太夫とその娘の方に対してワキ的な感じもして、二つ胴に入るところの大庭と六郎太夫の対話を真ん中で聞いている梶原、娘が戻ったあと六郎太夫に懇願するところを聞いている梶原、そのときの表情に見入る。

劇場に到着当初はたいへん張り切っていたのだったけども、『船弁慶』に気が張り過ぎてしまったせいか、最後の『松竹梅湯島掛軸』ではあろうことか眠ってしまった。歌舞伎でこんなに寝たのは初めてだった。いったいどうしたことだろう。菊五郎田之助がいて、この菊五郎劇団の感じがいかにもいいなあと思ったことしか記憶にない。目を覚ましてみると、思いっきり寝起き状態で頭痛までしてきた。

と、『船弁慶』ではずっと気が張りっぱなしだった。今回はとりわけ後ジテの足の感じを凝視していた。弁慶に祈られてだんだん力が抜けていくところとか。で、花道の引っ込みを間近で見てジーンと涙目に。うっ、なぜだか哀しくなってきた。あんなに楽しみにしていた『船弁慶』、これで見納めだ。何度も行こうと思いつつ二度しか行かれなかった。でも無事に見られてよかった。