朝の喫茶店

いつもよりずいぶん早くに家を出て、出先の近くの喫茶店で本をめくった。近松浄瑠璃集にとりかかったところで、『用明天王職人鑑』の人物関係図と各段の要点をこしらえる。といってもそんなに複雑ではない。頭注と補注をひっきりなしに眺めつつ序段の途中まで読んだ。つづきの職人づくしはどんな感じだろう。

たまに、朝の喫茶店でのんびりすることがある。まわりはおじさん客ばかりで、昔の日本映画に出てきそうな古ぼけたたたずまいがたのしい。朝ここでコーヒーを飲んでいると、一度だけ行ったことのある京都のイノダコーヒのことをいつも思い出す。なんだかちょっとした旅行気分なのだ。イノダコーヒとインテリアの洗練度は比べものにならないけれども、コーヒーの味は実はこっちの方が美味しい、と思う。

  • 雑誌「東京人」11月号《六本木の歩き方》

昨日立ち読みした「東京人」、がまんしきれず結局買ってしまった。日中、出先の通りがかりの書店にて買って、しばらく眺めて、ライカ同盟の座談記事に笑う。小特集の日比谷公園鹿島茂の文章が面白くて、日比谷公園はちょくちょく通り道になることがあって、詳しいことを知りたいと思いつつそれっきりだったのでよかった。日比谷公園というといつも久生十蘭の『魔都』を思い出す。何年も前に友だちが「ツボな本を発見した!」と言って見せてくれた写真集『や・ちまた』の鬼海弘雄の記事があったり、いつもは節約のため極力買わないようにしている「東京人」、今回買えたことで目当てのほかにも面白いページがまだまだあったのだった。それにしても、清水一の暮しの手帖社には大感激。正確には大熊喜英との共同設計だった。久保田万太郎で「麻布で気が知れぬ」という慣用句を知ったばかりということもあって、写真を見ているだけで結構たのしかった。