初芝居

昨日で年末年始気分は返上しようと思ったものの、今日は一気にお正月気分満喫。毎年のお楽しみ、歌舞伎座の初日。いつもはめったに初日に行ったりなどしないのに、1月に限っては必ず初日。毎年お正月休みをもてあまし気味だったところ、歌舞伎を見るようになって初めての新年に渡りに船と歌舞伎座の予定を入れてみたら、これが案外たのしくて、以来毎年の年中行事となった。わたしの初めての初芝居は1999年、羽左衛門の「絶景かな、絶景かな」で始まって、幸四郎芝翫の『関の扉』があって、吉右衛門の「馬鹿め!」で締め。あれからもう5年かあと遠い目。これから先、なんやかやで歌舞伎に飽きてしまうということも大いにありうるけれども、初芝居だけはずっと続けていけたらいいなあと思う。

松緑の『鳥居前』、勘九郎新之助の『高坏』、玉三郎の戸無瀬の九段目、菊五郎の『芝浜』と、役者が大充実で狂言立てもとてもいい感じで、幕間には花びら餅を食べて、たのしい観劇の一日だった。もっとも心躍ったのがやはりわたしにとってはひさしぶりの勘九郎新之助、なんだかもういかにも「スター!」というふうに、登場すると客席がどよめく、あの独特のざわめき感がとてもよくて、そのどよめきに思いっきり共鳴。次郎冠者をだましてやろうと高足売の新之助がギョロッと目を動かす瞬間が実にいい! と、妙に興奮だった。関東大震災後の関西での六代目菊五郎と久松一声との交際のなかで生まれた作品、という説明書きが面白かった。初演の昭和8年、戸板康二もこの舞台見たのかな。『芝浜革財布』と聞いて、落語で満喫しているのでわざわざ歌舞伎で見たいとまでは思わないなあというのが第一印象だったけれども、三木助が口演の際に六代目菊五郎の朝日のくだりを参考にした、というくだりがあったので、今回の歌舞伎座でそのことを実感できるかしらと急にたのしみになっていたのだった。と、六代目菊五郎に思いを馳せることができて、たのしい狂言立てだった。

そして、じんわりと五臓六腑に染みわたるような感じで興奮したのが、忠臣蔵の九段目。前に一度見たときも、歌舞伎座玉三郎仁左衛門勘九郎の共演をたいへん満喫して思い出の舞台だったけれども、細かい演出に関しては思いっきり記憶があいまいだったので、今回あらためて、じっくりとひとつひとつの芝居の運びを確認することができたのがよかった。こってりと重厚な丸本歌舞伎、というのが、いつももっとも興奮度が大きいのだった。来月は文楽の上演があるので、なおのことたのしみだ。


購入本

ザンデルリンクシューマンにガツーンとやられてしまって新しい年を迎えたばかり。そのせいかどうなのか、帰り道、近所の本屋さんで立ち読みしてふらふらっと衝動買い。