今年の洗亭忌の夜

昨日1月23日は戸板康二先生の11回目の命日、名づけて「洗亭忌」。一昨年は文学座アトリエで久保田万太郎の芝居『大寺学校』を見た。去年は静かに湯豆腐を食べた。そして、今年の洗亭忌の夜は、戸板康二推理小説、中村雅楽シリーズのドラマ化、勘三郎主演で1980年の「土曜ワイド劇場」で放映された『幽霊劇場殺人事件』上演会が賑々しく開催されたのだった(参加人数計2名)。さる方がヴィデオを貸してくださったのだ。勘三郎雅楽に扮していると知って以来、いつか見たいものだなあと思っていた夢の二時間ドラマ! こうして洗亭忌の夜に初めて見ることになったとはなんとオツなことだろう。

と、見る前までは大感激だったのだが、いざ見てみると……。一言で言うといかにも二時間ドラマ的な仕上がり。随所に登場する二時間ドラマ的定石を楽しむという感じで、突っ込みどころ満載であった。でもでも、勘三郎を眺めるのがことのほかたのしくて、二時間ドラマのなかでひとり異彩を放っている勘三郎がとてもよかった。その姿をホクホクと眺めた。ちっとも「名探偵」じゃないところも御愛嬌だった。

昼休みに本屋さんに行って文庫本を1冊買って、そのままコーヒーショップへ行って、ペラペラとめくるのが好きで、それ用の本をわざわざとっておいたりもする。と、そんな感じのとってあった『水曜日は狐の書評』を昨日の昼休みいつもの本屋さんで買って、そのままいつものコーヒーショップに直行した。で、いざ読み始めてみると、これが面白くて面白くて、とまらなくなってしまって、しょうがなく中途で切り上げたのだったが、午後中、ずっとテンションがあがりっぱなしだった。ここに登場する本、自分の好みとの重なり具合と重ならない具合のバランスがちょうどよかったのだとまずは思った。チェーホフ樋口一葉カフカ東海林さだお山田宏一ナボコフ杉浦茂等々が一度ならず二度以上登場するのがとても嬉しくて、その再出ぶりを目の当たりにすることでさながらサブリミナル効果のような感じに、かねてから愛読している書き手への思いが煮えたぎる。一度だけ登場のかねてからの愛読書も結構あって、その的確な評に心がスウィングしたり、これはぜひとも読まねばと思った本も頻出、書評だけ読んでも面白いのも目白押し、とにかく、すべてがすばらしい! とりあえず、今まっさきに読みたい本は、岩波文庫の『鳴雪自叙伝』。