銀座百点、日仏学院で映画

ひさしぶりに日仏学院で映画を見た。映画にひたったあとは、廊下に展示されているロラン・バルトのデッサンにほんわかとよい心持ちだった。帰宅すると、先週の木村伊兵衛土門拳の展覧会の図録が届いていた。夜ふけ、このところ夢中のポゴレリチハイドンを低音量で流しながら、じっくりと眺めた。

じっくりと眺めるその前に、図録の冒頭に掲載されている田沼武能と藤森武の対談をじっくりと熟読。この図録、収録されている写真が素晴らしいのはもちろんだけれども、冒頭にこの対談があることでさらに幸福になった。完璧な1冊になった。木村伊兵衛土門拳のそれぞれの助手だった二人による対談は「銀座百点」2001年7月号が初出とのこと、そして、今回の展覧会のそもそものきっかけはこの対談だったのだ。

と、「銀座百点」にあらためて胸を躍らせることとなったのだったが、そんな折、犬丸治さんのサイトに、《「銀座百点」と戸板康二》がアップされた。もう間然するところのない素晴らしい資料で、とにかくもう素晴らしい! 

http://homepage3.nifty.com/inumaru/newpage96.htm

さっそく隅々まで目を通してランランとなった。というわけで、《木村伊兵衛土門拳》と《「銀座百点」と戸板康二》とで、「銀座百点」つながりでむやみに大興奮、思いっきり宵っ張りの一夜になってしまった。

レストランのテーブルでジャン・ルノワールミシェル・シモンがワアワアと、ワインやコーヒーを片手におしゃべりに興じる。演出らしきものは特になくて、ひたすら二人の男の姿を眺めてそのおしゃべりに耳を傾ける時間、いかにも親密でいかにも幸福でいかにも天衣無縫で、スクリーンにひたるのがひたすら幸福なドキュメンタリー。主に『牝犬』と『素晴らしき放浪者』についてで、時折その画面が挿入されたりする、その構成もかっこよかった。『素晴らしき放浪者』のことを回想しつつ、映画のなかで小間使いが歌う歌を口ずさんだり、とあるシーンにまつわるちょっとしたエピソードを小耳にはさむにつけ、しみじみと『素晴らしき放浪者』の幸福が胸にフツフツと甦ってきて、それから未見の『牝犬』にもうっとり、女を刺すショットにドキドキだった。まとめてみると、ジャン・ルノワール熱が一気に再燃する映画の快楽に満ちたフィルムだった。舞台装置は日仏学院というのもいかにもな感じで嬉しいかぎり。ここの映画館では今までいろんな映画を見たものだった。

1966年、パリ付近のマルヌ川のほとりで、ジャン・ルノワールと俳優のミシェル・シモンが、愉快で、親密で、郷愁に満ちた会食を共にしながら、映画について、世界について語らう。冗談を言い合ったり、歌ったり、これまでに共に撮った作品『牝犬』、『素晴らしき放浪者』について思い出を語り合う。「現代の映画作家シリーズ」で、リヴェットが敬愛するルノワールについて撮った3部作の中の第2部にあたる作品。「リヴェットは、ルノワールについてのこの3部作の撮影で、映画作りにおける自由を感じ取っていたと思う。キャメラが廻り始めたときから、そこに何かが存在し、映画が動き始めるのを感じていた」(アンドレ・S・ラバルト)。(紹介文転記)

購入本

  • 《近代写真の生みの親 木村伊兵衛土門拳》展図録(有楽町朝日ギャラリー、2004年1月30日〜3月3日)