新年度

日暮れ時、あれこれ日用品を買いがてら銀座を横断した。久保田万太郎の句集を眺めていたら「花曇世帯道具を買ひありく」というのがあっていいなアと思った。その俳句のことを思い出して、いい気分で練り歩いた。万太郎の句、「花曇」という季題がいかにも似つかわしい。最後は教文館で本を見て、あれこれ欲しい本がありすぎで結局何も買えず、京橋図書館へ向かう途中は奥村書店で本を見た。以前金子さんの「読前読後」を拝見して以来ずっと気になっていた、朝日新聞社の『値段の明治・大正・昭和風俗史』の元版3冊揃いが売っていて、ワオ! となったものの値段的にちょっと手が出なかった。戸板康二のところのみ立ち読みして、将来の(安価での)邂逅を願いつつ棚に戻した直後、丸谷才一らの鼎談書評集をふらっと立ち読みしたら、戸板康二の『ちょっといい話』のことがわりと詳しく載っていてニンマリ。こちらは安かったので一瞬迷ったけども、図書館でコピーしようと結局見送った。と、立て続けに戸板康二関連の立ち読みをした。

帰宅後は、音楽聴きながら部屋の片付け。仕入れた世帯道具をあちこちに配置して、気分すっきり。このところ娯楽の追及で落ち着かなかったので、少しずつ生活を立て直していこう。あいかわらずの家事かたわらのイヤホン聴きが楽しくて、今日は突発的に聴いた、ギュンター・ヴァント指揮ベルリンフィルシューベルトに夢中だった。《未完成》も美しいけれども、《ザ・グレイト》がとにかくすごい。第4楽章のしつこい繰り返しがこれでもかと面白くて管弦楽の見事さとあいまってちょっと悪魔的ですらある。繰り返しのたびにゾクゾクとびっくりと聴き惚れてしまった。寝床では、ポリーニストラヴィンスキーにハイテンション。