歌舞伎座と奥村書店

foujita2004-06-05


今日も無理なく早起きできて、とてもよい天気なので、まっさきに洗濯をした。出かける頃にはすっかり乾いていて嬉しい。外出前に洗濯物が乾いたというだけで「あー、本日はなんたるよき日ぞや」とたいへん嬉しくなり、機嫌よく外出。歌舞伎座の昼の部を見物した。海老蔵の隣の玉三郎が母のようだった口上のあとの幕間に、ふらっと奥村書店に行った。

戸板康二桑原甲子雄との対談でちょろっと語っていた、「演芸画報」と「新演芸」の役者写真の違いのことを思い出して「新演芸」を立ち読みして、なるほどッとなった。これに限らず、歌舞伎と写真の関わりの歴史のようなものを、いろいろ突っ込んでみると面白そうだ。というようなことを思いつつ、立ち読みに没頭。どうも奥村書店では我を忘れて立ち読み、ということをしてしまいがちなので反省しないといけない。と、お店を出ようとしたそのとき、戸板康二の『わが歌舞伎』の河出文庫版を発見して、わーいとなった。今までずっと探していた戸板さん初の文庫本、ずっと探していたばかりに探していたことすら忘れていた戸板さんの文庫本『わが歌舞伎』は「暫」が一面に描かれたカバー装画がとても素敵で、喜び二倍だった。このカバーは初山滋だと知って、喜び三倍。歌舞伎の文庫本の表紙によくあるような紋切型の「暫」の挿画なのに、こんなに素敵になるなんて、とワクワクだった。

戸板さんの文庫本を手にとって気が大きくなって、店頭に置いてあった、『助六』と『暫』の記事がある昭和5年の「演芸画報」を一緒に購入。こちらは田中良による表紙絵がとてもいい感じ。『鏡獅子』の開幕時間が迫ってしまって、炎天下のなか、歌舞伎座へ走った。歌舞伎のあとの待ち合わせまでの空き時間はコーヒーを飲みながら、「演芸画報」をホクホクとめくった。価格は500円なので、普通の雑誌を買うみたいな感覚で、今読みたい記事があるのでふらっと買うというのがぴったり。戸板さんの文庫本といい「演芸画報」といい、歌舞伎見物とともにいかにも奥村書店という感じの買い物をするのは、ずいぶんひさしぶり。ますます「あー、本日はなんたるよき日ぞや」と上機嫌だった。

帰宅すると、都筑道夫のミステリー論集『死体を無事に消すまで』が届いていた。同じく晶文社のミステリ論集『黄色い部屋はいかに改装されたか?』が先日届いたばかり、第一弾の『死体を無事に消すまで』の存在を知って、いそいそと注文したのだった。いかにも往年の晶文社というふうな造本にうっとり。さっそく『死体を無事に消すまで』をペラペラとめくって、すっかり宵っ張り。目当ての久生十蘭のみならず、加田伶太郎徳川夢声といった文章が嬉しかった。

芝居見物

購入本