皿皿皿と皿

午後、雨降りしきるなか、京橋図書館へ。予約してあった本が全部届いていて、雨の中を来た甲斐があった。コーヒーを飲みながら本をめくってのんびりしようとタリーズへ移動。さっそく読みふけったのが、永井龍男の『皿皿皿と皿』。さる方より教えていただいてからずっと気になっていた小説で、講談社文芸文庫の『コチャバンバ行き』に収録されているということを調査済みだったものの、なかなかお目にかかれないので、待ちきれずに図書館で借りることにしたのだった。と、さっそく読み始めて、さっそく絶妙だなアと、さっそくホクホクとページを繰った。昭和37年10月から1年間にわたって「週刊朝日」に連載していたもので、見開き2ページのごく短い文章が約50篇収録されている。その50篇がそれぞれ独立しつつも連関し交差し連続して形成されている長篇小説。「皿皿皿と皿」というタイトルが実にきいている。そんな場面場面の切り替えとか日常の細部描写がなんだか小津安二郎の映画を見ているような感覚でもあって、こういう文章にひたっているのが一番好きかもという気になってきた。雨降りしきる中、お客もまばらなタリーズの店内でいい気分になっているうちに、結構時間が迫っているのでびっくり。あわてて外に出て、歌舞伎座に向かって早歩き。『吃又』が実にすばらしかった! もうちょっと落ち着いて見物するつもりが、再見の『助六』ではますます興奮! 帰宅後の夜ふけ、紅茶を飲みながら『皿皿皿と皿』を読了。短篇の積み重ねでもって緩やかに進行する季節がよかった。

芝居見物