今週届いた本と今週見た映画

foujita2004-06-27

先週図書館に出かけた折に、明治33年創刊の三木竹二主宰の雑誌「歌舞伎」をホクホクと拾い読みした。三木竹二追悼ページだけとりあえずコピーして持ち帰ったのだったが、その号の冒頭に鏑木清方の《寺子屋画帖》の掲載があって嬉しかった。この画帖は原本を鎌倉雪ノ下の鏑木清方美術館で見たことがあって、当時大感激していたもの。明治32年3月の歌舞伎座で源蔵が菊五郎團十郎の松王丸が珍しい型をしているというので画帖に仕立てたという。と、思いがけないところで清方の絵に再会したのが嬉しくて、帰宅後はひさびさにかつて美術館で買った「卓上芸術編」の図録を眺めて、これがまたいたく至福だった。この図録は明治・大正と昭和の二分冊になっていて、冒頭にさっそく《寺子屋画帖》が登場する明治・大正の方は、あとの方をめくっていくと、金沢文庫での別荘の日々を描いた絵が次々と登場して、清方の「卓上芸術」の典型的眼福に満ち満ちている。まだ6月だというのに暑くてずいぶんくたびれていたのだけれども、清方の描く夏の日々を眺めているうちに、急に気分が清々してきたのが嬉しかった。昭和篇をめくると、これまた大好きな樋口一葉の『にごりえ』を描いた絵をひさびさに見てひさびさに一葉を読み返したりなんてことも。それにしても鏑木清方美術館の図録「卓上芸術」はすばらしい。来月はひさびさに鎌倉へ出かける予定で今からとてもたのしみ、鏑木清方美術館でまたなにかお土産が買えればいいなと思っているところ。

三木竹二の余波で買った本が、石川淳の『前賢餘韻』。鴎外全集の月報の文章を収録していて、三木竹二に関する文章もしっかりと入っていて嬉しいかぎり。図書館でこの本のことを知ってネットで安く売っているのを見つけてさっそく申し込んだのだけれども、届くより前に図書館へ行きがてらにのぞいた奥村書店にしっかり売っているのを見つけてしまった。せっかくなら奥村書店で買いたかったけれども、まあしょうがない。

川島雄三川島雄三チックなところが余ることなくスクリーンに詰まっているという映画。もうとにかくすばらしい! ここまでくるとついていけない、となりそうな寸前のところでとどまっているギリギリ感が実によかった。何度もゲラゲラ笑った。出演俳優が豪華で、その俳優全員が持ち味を活かしていて素晴らしかった。『夫婦善哉』コンビそのままの淡島千景の女房っぷりもよかったし、池内淳子の従順な妻もかわいらしく、水谷良重の現在ッ子芸妓もよかったし、団令子もかわいかった。森繁のみならず、加東大介、フランキーなどという面々も嬉しいが、三木のり平がとにかくすごいすごい、山茶花究が「キャー!」だった。チラシ紹介文にある通りに映画のあとはテーマソング「とんかつが食えなくなったら死んでしまいたい〜♪」がずっと頭を離れなかった。『縞の背広の親分衆』のときは「象屋、象屋、エレファント〜♪」だったけ。いつもながらに「銀幕の東京」の名手としての川島雄三の冴えがすばらしくて東京オリンピック直前の東京の風俗がイキイキ、上野を舞台にドタバタと俳優たちが動き回って川島節炸裂、トイレシーンが何度も登場するところなんていかにもだった。そしてカラッとどこまでも乾ききっていた。

上野にある実在のとんかつ屋を舞台に、豪華キャストで贈るほんわか喜劇。森繁が唄う「とんかつの唄」は一度聴いたら耳から離れず、クロレラ研究家の三木のり平、豚殺し名人の山茶花究も脳裏を離れず。(チラシ紹介文より)