西荻の日曜日

foujita2004-07-04


昼下がり、西荻でお蕎麦。この週末はよいお天気で日射しはよく射しているけれど、あんまりムシムシはしていなくて、日陰を歩いているとソヨソヨとした風が気持ちよかった。よき夏の日という感じ。音羽館で古本文庫を数冊買ったあと、コーヒーを飲んでのんびり。だいぶ長居したけどまだまだ外は明るかった。ひさしぶりの日曜日の西荻の夕暮れがとてもよかった。夏至からそう遠くない頃の夕暮れの空が好きだ。

そろそろ暗くなるかなというころに帰宅してラジオのスイッチを入れたら、ちょうど「ラジオ名人寄席」が始まったところで、八代目可楽の『猫の災難』と『明烏』でわーいだった。『猫の災難』の酒呑みのぼやき口調のぼやき具合にメロメロ、『明烏』も二人の男のぼやき口調もすごくよかった。いいなア……。文楽の『明烏』の高座のあとは売店で甘納豆がよく売れたという玉置宏の解説もいいなアと思った。「朝の甘味はオツだよ、これで濃宇治かなんか入れてもらやア、思い置くことさらになしさ」。

落語といえば、このところ志ん朝の『三軒長家』中毒で、この10日間でいったい何度聴いたことだろう。生粋の江戸落語、終始舞台が長家に固定されていて、入れ替わり立ち替わりの登場人物の「江戸落語人物事典」という趣きの群像劇。「助六」の落語版、という気がして、何度聴いてもうっとり。

購入本


ひさしぶりの音羽館で文庫本ショッピング。そんなに高くない文庫本を勢いに乗ってポンポン買うのはいつも楽しい。中公文庫で泣く泣く1冊見送ったものがあるのだけれども(500円以上になるととたんに財布のヒモがきつくなる)、今度来たときにもあるといいなと思う。ないのだろうけど。

わりと最近、図書館で全集を借りて読んだ『青春物語』であったが、中公文庫で出ていたとは不覚にも知らなんだ。ずっと手元に置いておきたい部類の文章だったのでとても嬉しかった。この文章に書かれてある諸々のことはこれからもさらに追求したいところなのだった。「中央公論」に昭和7年9月から昭和8年3月まで連載された『青春物語』と「改造」昭和8年3、4月号に掲載された『藝談』を収録した、中央公論社発行の単行本『青春物語』(昭和8年8月刊)がそのまま文庫本になったもの。全集で読んだときと違って図版(主に登場人物の顔写真)がたっぷりなのも嬉しい。表紙は小出楢重の《裸婦》。

  • 近藤富枝『馬込文学地図』(中公文庫、昭和59年)

『本郷菊富士ホテル』、『田端文士村』に続く1冊。数年前に読んだ『本郷菊富士ホテル』、数カ月前に読んだ『田端文士村』といった感じに、緩慢に追っていた近藤富枝さんの「大正・昭和初期文壇側面史」の三部作の最終巻。発見とともに迷わず手にとった。解説は海野弘。中公文庫版の三部作、表紙が風間完で統一されているのもいい感じ。

ずっと読みたいと思いつつなぜかずっと機会を逸していた『一国の首都』をようやく入手できて嬉しい。『露伴随筆集』上下は、ついこの間、教文館で遭遇した「岩波文庫品切れ本フェア」でワオ! と手にとったものの所持金に不安があったので、ほかの安い本を買って露伴は断念して、次の日にいそいそと出直したらお決まりの展開で売れてしまっていたのだった。上巻だけ見つけて「ふっ」とほくそ笑み、こうなったら下巻も定価以下で入手して雪辱を晴らしたいところ。と、しょうこりもなうセコいことを思う。

前々から読みたかった本。講談社文芸文庫での邂逅を待っていたのだった。目次を眺めて山口昌男の『挫折の昭和史』を思い出した。名取洋之助に関する小林勇の文章を読んでみたいとずっと思っていたので嬉しかった。