寄り道本読み

夕暮れどき、ふらっと銀座散歩。ハウスオブシセイドウへマン・レイの展覧会を見に行った。1階は写真の展示で2階はオブジェや版画など。2階の会場の空間がとても素敵で、マン・レイの展示もよかったけど、資生堂のパッケージデザインの展示が眼福で、さらに嬉しかったのがライブラリーコーナー。読みたい本、眺めたい本がたくさんあって、これから何度でも寄り道したいところ。初めての今回は「花椿」のバックナンバーをホクホクと眺めた。これまた、これから何度でも寄り道して眺めたい。今回は、昭和29年から30年代半ばまでをざっと見た。久生十蘭の連載小説『人魚』を読んだ。永井龍男梅崎春生など、たまにちょろっといい感じの顔ぶれになる。誌面のデザインの変化を見るのも楽しかった。たまにちょっと凝っていたりしておもしろい。

と、思いがけなく長居してしまって、あわてて京橋図書館へ。気になっていた新刊本を何冊か借りることができてホクホク。「演劇界」の劇評を読んだりと、雑誌を適当にめくっているうちに閉館時間になった。先月の歌舞伎座がもうすっかり遠くのことのように感じてぼーっとなった。今回は2月と3月の劇評も読むことができた。『三人吉三』の劇評がとても面白かった。3月の劇評を読んで、『先代萩』の段四郎のことを思い出した。図書館のあとは、タリーズで借りたばかりの、昭和15年発行の岡田八千代著『若き日の小山内薫』を繰った。いつもながらに渋い品揃えが嬉しい図書館だ。小金井喜美子の『鴎外の思い出』のような妹による兄の回想で、小金井喜美子同様、岡田八千代も文章そのものがとても美しくて知的で淡々としている。ここに描かれている家族の肖像も、家族をその弱さもろとも愛情をこめつつ離れた目で描写するという筆致もすばらしい。明治の東京山の手の生活の資料としても秀逸で、岩波文庫に入って欲しいなあと思った。


展覧会メモ

購入本

  • 雑誌「東京人」8月号《小特集・落語 講談 怪談噺》

昼休みの本屋さんで買ったすぐあとでコーヒーショップで眺めてうっとりの、雲助師匠がかっこいい怪談噺特集が目当てで購入。矢野誠一さんの文章のところに掲載の、河鍋暁斎円朝像の図版に「おっ」だった。「東京人」はいちいち反応していたらキリがないというか、いかにもな誌面になぜか「その手にはのらないぞ」という気にさせられて(なんのこっちゃ)、よほどのことがないかぎり買わないように気をつけている。今回はその「よほどのこと」だったわけだけど、こうしてめでたく買う機会があると、目当て以外のページも面白いのでいつも得した気分になるのだった。ハチミツ好きとしては、藤原養蜂場に関する記事が嬉しかった。小三治の「まくら」のミツバチのくだりを思い出してニンマリだった。そのとき小三治が言っていた「江戸ッ子はちみつ」はもうなくなってしまっているのだそうで、あらためてデ・ラランデ邸に行きたかったものだと思う。