「Bookish」の山田稔特集号を繰る

明日が休みで嬉しいなアと機嫌よく早起きして早々に外出。サマータイム終了後も朝の喫茶店の読書時間は順調に続いているのだった。ビュトールの『心変わり』を読み進める、その前に、突発的に持参した「Bookish」の山田稔特集号を繰る。長沖一「小特集」に興奮したあと、たのしみはあとにとっておこうと未読のままだった山田稔さんの特集、あとにとっておきすぎていつのまにか3ヶ月が過ぎていた。

順番にじっくりと読む。巻頭の堀江敏幸さんの文章にあるグルニエの『チェーホフの感じ』にまつわる挿話が嬉しい。何十年後かに堀江敏幸新訳というのが登場したら面白いかもと妄想。はじめてパリに行ったときに本屋さんでまっさきに探したのは『チェーホフの感じ』の原著だった。もう10年も前のこと。三輪正道さんの「山田稔・極私的読み方」という文章を読んで、次なる山田稔本は『影とささやき』と『生の傾き』にしようとメモ。山田稔の著書では未読がまだまだあるので、おたのしみが待っていて、嬉しい。それから、川崎彰彦『夜がらすの記』を読んでみようと思った、のでメモ。

山田稔ロングインタヴュウが圧巻だなあと心に刻むこと多々あり。今、好きな本を1冊だけあげるからなにか選びたまえ、と言われたら、「日本小説をよむ会」会報抄録の私家版『日本小説を読む』上下だなあと思う。当初は東京の出版社で出してもらえないかあたったけど量が膨大でどこでも断られたと山田稔さんは語っている。夏に大阪で実物を初めて見ることができて、もだえるくらいにうらやましかったことを思い出すのだった。


夜、フィルムセンターにて中川信夫の『東海道四谷怪談』を見る。長らく念願の映画だったけど、いざ見てみると拍子抜けという感じでうまく消化できず。主演の天知茂の風貌というかオーラはすばらしかったりと、見てよかったことだけは確か。会場から何度も笑いが起き、怪談映画の傑作は時が過ぎるとギャグになってしまうようだ、ということが印象に残る。