文庫本をさがし、去年の梅雨の甲府を追憶す。

foujita2006-02-07


朝。かたづけをしている折、昨日神保町で入手した「春の岩波文庫リクエスト復刊」のチラシを眺めていたら、神西清訳のドストエフスキー『永遠の夫』の文字に目が釘付け。未所持の神西清の翻訳本がまたまた入手できるとはなんと嬉しいことだろうとしみじみしているうちに、ふと新潮文庫の『永遠の夫』のことを思い出した。ドストエフスキーの顔面が表紙のあの文庫本は大昔の愛読書だった。なんだか急に読み返したくなってきた。こうしてはいられないと、さっそく発掘作業を開始するもいつまでたっても発見ならず、あせる。朝っぱらから何をしているのだろうと、脂汗すらにじんでくるのだった。


『永遠の夫』はあきらめて、力なく外出。いつまでも力が出ないのでコーヒーを飲んでいくことにする。ほんの気散じに昨日神保町で入手したちくま文庫の解説目録をツラツラと眺めていたら、ディケンズ『荒涼館』全4巻の文字に「おっ」となった。ずっとあきらめていたけど、2006年の目録に記載があるとはいったいどういうことなのだろう。こうしてはいられない、さっそく今日買いに行かねばと、急に張り切る。で、帰り、神保町に立ち寄る。東京堂に行くも『荒涼館』はない、書泉にもない、しょうがないので三省堂に行ったが以下同文、岩波ブックセンターも以下同文。シオシオと神保町をあとにする。


帰宅すると、山梨県立文学館(http://www.bungakukan.pref.yamanashi.jp/)の館報第61号(2005年6月発行)が届いていた。八木福次郎さんによる「広瀬千香さんの思い出」という文章が掲載されていると知って、郵送を依頼していたのだった。去年の6月から10月にかけて常設展示で《廣瀬千香の仕事》なる特集が組まれていたとのこと。実は去年の梅雨の頃、ちょうどこの展示が催される直前に甲府に出かけていて、文学館にも行っていたのだったがタイミングが合わなかった。惜しいことをしてしまった。文学館は県立美術館と同じ敷地の公園にあり、広々として真新しい立派な建物だった。けど、文学館も美術館もワクワク度はイマイチ。ちなみに文学館での一番のみものは常設の片隅にある井伏鱒二宛の深沢七郎の書簡、これを見るだけでも出かける価値があったかもと思った。さてさて、当時甲府に出かけた一番のお目当ては名取春仙美術館(http://shunsen.art-museum.city.minami-alps.yamanashi.jp/)で、その立地条件もなんのその、張り切って出かけて入手した図録はなかなかの逸品。


そんなこんなで、初夏の甲府(とワイン)を追憶しつつ、名取春仙の大河内伝次郎(昭和9年)を貼り付け。キャー、かっこいい! 秋に出かけた大河内山荘を思い出すなあ。入手してそれっきりの富士正晴著『大河内伝次郎』を読まねば…。そうだ、同じく入手したままそれっきりの富士正晴著『どうなとなれ』も発掘しないとなあ。……というようなことをしているうちに、『永遠の夫』や『荒涼館』のことをすっかり忘れているのだった。