『虹をつかむ男』を読み、『ベルばら』を聴き、「俳優館」を眺める。

日没後、マロニエ通りをズンズンと歩いて、京橋図書館へゆく。本をわんさと借りて、ホクホクと帰宅。家事その他を大急ぎで片づけて、次々と繰ってゆく。『十夜』というタイトルの短篇小説のアンソロジーランダムハウス講談社、2006年)に野口冨士男の『相生橋煙雨』が載っていて、堀江敏幸が紹介文を書いている、と知ってさっそく借りてきた。まずは、堀江敏幸によるエッセイを読む。北村薫ジェイムズ・サーバーの『虹をつかむ男』を紹介しているのを見て気が向いて、十何年かぶりに『虹をつかむ男』を読んで、しみじみいとおしいなあとウルウル。早川書房異色作家短篇集はずいぶん前に古本屋に売ってしまった。機会があったら買いなおしたいものだと思う。

…というようなことをしているうちに、そうだ、『ベルばら』のディスクを借りてきたのだった、こうしてはいられないと、ガバッと立ち上がる。宝塚を追憶するために借りてきた「ベルサイユのばら〜昭和版〜ベスト」という名のディスクをドキドキしながら再生。まっさきに聞こえてきたのは安奈淳の歌う「愛〜、それは〜♪」であった。そのたしかな歌唱力に感激しているうちに、次の曲へ。次は榛名由梨の歌う「ブロンドの髪、ひるがえし〜♪」であった。先週の東京宝塚劇場を思い出して、懐かしい。たった一週間前なのにずいぶん前のような気がする。などと、胸が熱くしながら、順番に聴いてゆく。「夢の馬車」がかわいい! ステファン人形を追憶する。

…というようなことをしているうちに、そうだ、安奈淳宮口精二の対談記事があったはずと、書棚から、宮口精二の雑誌「俳優館」を取り出して、最終号の第41号(宮口精二追悼号)の索引から探して、安奈淳の対談を読む。興にのって、索引から宝塚出身の人々を探して、次から次へと記事を読む。そんなことをしているうちに、すっかり夜がふける。『十夜』に入っていた志賀直哉の『剃刀』を読んで、就寝。