喫茶店で『大正文学』を繰り、寝床で竹中郁『巴里のてがみ』を繰る。

朝っぱらからジンジンと身体全体がだるくて、気が滅入るので、コーヒーを飲んで気を紛らわす。昨日届いたばかりの『大正文学 2 特集・久保田万太郎』(大正文学会、1991年3月)を眺める。戸板康二による一文、「万太郎文学の特徴」が嬉しくて嬉しくて、何度も読み返す。戸板康二以外の文章も、万太郎ファンにとっては、舌なめずりの論考の目白押し。うーむ、これは本当に大収穫であったと、いつまでも嬉しい。ところで、大正文学会の『大正文学』のことは今回初めて知った。ちょいと調べてみると、創刊は1987年で、3は「特集・葛西善蔵」(1992年12月)、4は「特集・関東大震災と文学」(1995年10月)、5は「特集・広津和郎の作家姿勢」(1999年12月)、6は「総特集・宇野浩二」(2002年9月)というふうになっている。うーむ、すばらしい。これから古書展などでちょっと注意してみようと思うのだった。

昼、日傘をさして、銀行へ向かって歩を進めているうちに、急に身体全体に悪寒が走り、ああ、これはもう典型的な風邪っぴきではないか、なんということだ、なんとしても週末までにはなおさねばならぬとメラメラと決意し、夕刻、ヨロヨロと早々に帰宅して、早々に寝床に入る。このところ生活が雑だったなあと深く反省をして寝床のなかで小さくなっているうちにいつのまにか眠ってしまい、夜中に目が覚めると、今度はなかなか眠れない。しょうがないので、昨日届いたばかりの竹中郁『巴里のてがみ』(編集工房ノア、1986年)を繰る。昭和3年から5年にかけてパリに留学していた詩人の当時の文章集。実にうつくしい本だなあと、じんわりと嬉しくて、救われる心地す。神戸の小磯良平美術館のことを思い出す。カール・ドライヤーの『裁かるるジャンヌ』の同時代評にジーンとなっているうちにいつのまにか本を閉じて、眠っていた。